かすれ知らずの筆ペン「完美王」

2014年の秋頃に呉竹から「完美王」という筆ペンが発売されました。

「カートリッジを押さずに、インキが流れる新感覚筆ぺん!」をキャッチコピーとし、今までになかった筆ペンとして売り出しています。

これまでの筆ペンと何が違うの?

従来の毛筆タイプの筆ペンはインク量の調整が難しく、押し出す力の加減を誤ると筆先からインクが溢れ出す点で扱いが難しい筆記具でした。

この場合、余分なインクをティッシュで吸い取るなどしない限り、いつまでも野太い線質になってしまいます。

一方、「完美王」ではインクカートリッジをこまめに押し出す墨継ぎの作業は必要ありません。常に適量のインクを保つ作りが他の筆ペンにはない特徴です。

作りの違いを見比べる

同じ毛筆タイプの筆ペン、ぺんてる「つみ穂」と比べてみます。

従来の筆ペンとの大きな違いはインクを貯蔵しているカートリッジの接続方法です。

コネクタの形状で表すと、

穂先側 カートリッジ側
呉竹 完美王 凹型 凸型
ぺんてる つみ穂 凸型 凹型

こんな構造の違いとなっています。

「完美王」は、カートリッジ側の芯棒を差し込むと毛細管現象の要領で絶えずインクが補充されるようです。

カートリッジを差し込んでから使用可能になるまでの時間は5分程度で、その間は何もしなくてよいのです。今まで面倒であった、穂先の様子を見ながらインクを慎重に送り出す最初の作業を省けます。

待っているだけで白い穂先にインクがじわじわと満たされていく様子は「完美王」でしか見られない特徴です。

穂先の違いを見比べる

筆先を比べてみると、筆穂の長さは「完美王」の方が短く、軸に近い「腰」と呼ばれる箇所がふっくらとしています。

筆穂が短く根本が太い「完美王」は、筆圧に対して反発力が強いコシのある筆ペンに分類されるのではないかと思います。

「つみ穂」はぺんてるの筆ペン製品の中でも弾力性に富む特徴がありますが、「完美王」も同程度のコシがあります。

また、「完美王」は、筆穂が短い割に先端の毛(命毛)が長い特徴があります。

書き味の違いを比べる

発色の良さでは呉竹「完美王」に分があり、黒々とした発色で文字が引き立って見えます。

「完美王」は穂先のまとまりが良いので、「つみ穂」と比べて繊細な表現が可能です。これは毛筆の線を活かす「命毛」[1]にも似た先端の長い毛が関係しているせいでしょうか、細い線が難なく書けます。

ただ、それが使いやすさに直結するかというと、人によりけりなので使い手次第といった印象です。メーカーによって筆ペンの製造方法が異なりますから、同じ筆ペンを愛用している人ほど違和感を感じやすいと思います。

完美王は条件によってインクフローが変わる?

「インクカートリッジを押さなくても自然にインクが流れる」を売りとした完美王ですが、時々、インクの出が良すぎることがあります。

その条件は推測に過ぎませんが、

  • 手から伝わる体温によってインクの温度が上がる。
  • 気密性の高いキャップを外すと起こる気圧の変化。

何らかの影響でカートリッジ内のインクを穂先側へ過剰供給することがあります。

インクがだくだくの状態で書いても、その割に不思議とにじまないので気にならないとは思いますが、ペン習字の課題で「完美王」を使うのは少しリスキーかもしれません。

とにかく、カスレ知らずの筆ペンです。

墨汁を含んだ毛筆は筆を走らせるほど線が掠れていくものですが、「完美王」はその逆で書くほどにインク含みが良くなる不思議な筆でした。

  1. 筆穂の中心から一番長く伸びている先端の毛。入筆では命毛から紙面に接し、収筆では命毛が最後まで残るため、線質に大きく関わる。「筆の芯」となる大切な毛。命毛が切れてしまうと繊細な線が書けなくなる。 []
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