「万年筆の大橋堂」でペン習字用の万年筆を購入した話

大橋堂万年筆の玄関

私のファースト万年筆は、仙台に工房を構えている手作り万年筆の「大橋堂」でした。

当時は万年筆についての知識がほとんどなく、スイーツや鳥類を連想する万年筆ブランドすら見分けがつかない状態でした。文具系のブログを購読しながら情報収集するうちに、なぜだか「手作り万年筆」というワードに心を強く惹かれます。

「手作りといえば → 職人さんが作る → 職人といえば頑固一徹な性格 → 譲れない手間によって生産数が少ない → 引き立つ独自のこだわり → 言い知れぬ特別感 → 万年筆を持つなら手作りだ!」とでも思ったのでしょうか数年前の私は。

最寄りの建物

大橋堂万年筆の看板

手作り万年筆の中でも仙台に拠点を置く「大橋堂」さんとの縁を勝手に感じ取り、調べた住所に行ってみるとそこはマンションの一室でした。

おそるおそるインターホンを押し、応対してくれた方は明らかに接客モードではなく、段々と場違いな様子に気付き始めます。

それでも快く中に招き入れていただき、話を聞いてみると、

  • ここでもうちの万年筆は買えるけど、種類はあまり置いていないこと。
  • 震災の影響でまだ材料が満足に手に入らないこと。
  • 作った万年筆のほとんどを催事場に持ち出していること。

「近場だとこの期間に三越で催事を予定しているから来るといいよ」との情報いただき、その日は雑誌社から取材を受けたページのコピーをもらって帰りました。私のようにふらっとやってくる人はたまにいるらしいです。

日を改めて仙台三越へ行ってみると。

催事中の仙台三越

百貨店は、物々しい雰囲気が苦手であまり入ったことがなかったのですが、大橋堂のブースはそんな様子もなく、長机3つ分ほどのややこじんまりとしたスペースの中、慣れた手つきで年配の女性職人さんが接客していました。

通路を挟んだ控えのイスでしばらく待機していると、先客との応対が終わったのか、職人さんが手招きして呼んでくれました。

大橋堂万年筆のニブ

さっそく、「文字の強弱を表現できるペン習字向きの万年筆はありませんか」という旨を伝えたところ、通常のペン先と比較してひと目で長いと判別できる万年筆を勧められました。

これは「トメ」「ハネ」「ハライ」がきれいに書けるんだよと教えてもらいながら試筆してみると、言われてみればたしかに…(職人さんがそう仰るのだから間違いないのだろうという体で)。

それでも、いつも使っているデスクペンとは違う、ぐにぐにとたわむペン先に感動したり、万年筆に初めて触れて舞い上がっていた影響もあってか、悩み抜いたあげく職人さんのセールストークに後押しされ「えいや」と財布の紐を緩めました。

大橋堂万年筆の外箱

中は取扱説明書と本体

大橋堂万年筆の化粧箱は桐箱でした。

大橋堂万年筆 キャップを付けた状態

胴軸は経年劣化しにくいエボナイト製です。

手作業による加工のため、1日20本程度つくるのが精一杯だそうです。販売ブースで再生していたビデオを見てみると、ろくろの爪にエボナイト樹脂をはめ込んで、手元がブレないように固定しつつ、刃物をゆっくり当てながら胴軸の形へと削り出していました。

大橋堂万年筆 キャップを外した状態

特徴らしい特徴がない装飾が控えめな外観や、丸玉クリップ。そこはかとなく昭和を感じる昔ながらの万年筆です。

大橋堂万年筆 尾軸にキャップを装着する

接客してもらっている途中、ちらほらお客さんが来るものの、馴染み客なのか簡単な挨拶を交わすだけで一向に買う気配がなく不思議に思いました。

あとから分かったのですが、大橋堂万年筆ではいちど購入したユーザには無料点検を案内するハガキを送ってくれます。そのお知らせによって地元での催事が分かるという段取りになっているため、大橋堂万年筆に興味がある人は電話で出店スケジュールを聞くなどしないと手に入れるのが難しいです[1]

全国の催事場を巡る大橋堂万年筆は、人によっては一期一会にも近い神出鬼没の存在です。それでも長いあいだ同じ販売手法を続けられるのは、それだけ多くの人に大橋堂が支持されているからなのでしょうね。

大橋堂万年筆で書いてみる

大橋堂万年筆で『ペンの光』課題を書く

大橋堂万年筆を使って『ペンの光』の課題を書いてみました。

大橋堂万年筆で『ペンの光』課題を書く

肝心の線の強弱については私自身がへたっぴなのでうまく伝わりませんが、字形にとらわれずにスラスラと書くようにすれば線の抑揚をしっかり表現できます。

ただ、つけペンを使い出してから改めて大橋堂万年筆を使ってみると、繊細な線質においては敵わない印象があります。つけペンの方がしなりは良いです。それでもプレピー万年筆 0.2より細く書けるのだから、万年筆の中ではよほど極細なんだと思います。

大橋堂のペン先は、セーラー万年筆のOEMと聞きます。するとこれは「細美研ぎ」に属するタイプなのでしょうか。

理想とする万年筆像が定まっていなかった頃に購入したので、今では出番が少ない万年筆ですが、こうやって数年前の出来事をかなり鮮明に思い出せるのですから、初めての万年筆としては申し分のない一品でした。

  1. 現在は、「万年筆の大橋堂 Facebook」で出店情報を確認できます []
スポンサーリンク

シェアボタンから、この記事の情報をおすそ分けできます

コメント

  1. Yumi より:

    手作り万年筆いいですね。
    ペン先が長い方が、トメ、ハネ、ハライがキレイに書けるんですか。
    私も、肩の力を抜いて、万年筆でサラサラっと書けるようになりたいです。

  2. uta より:

    一概にそうとは言えないのですが、
    細字万年筆全般が「とめ」や「はらい」を書きやすいというのはありますね。
    小さく書いても文字がつぶれにくく、日本語を書くのに適しています。

  3. ペリー より:

    突然失礼いたします。
    「繊細な線質」なんですが、通常万年筆は力を抜いて速く書いてもインクがとぎれないように調整されていますから、ペン習字にはインクが出すぎるかもしれません。また、ペン先がなめらかに滑りすぎて抵抗感が足りない場合にも線の表情が出にくくなるかもしれません。

    世に中に、技術を持った万年筆専門店は多くありますが、大橋堂は客の希望を汲み取ってくれて融通がきき、自分の考えを押し付けないという点でトップクラスだと思っています。職人さんによって違いはあるかもしれませんが、ペン先だけ、あるいは軸だけあつらえ直すということもやってくれます。
    是非、ふだんお使いの付けペンを持っていらして、実際に書いて見せ、また、書いてもらって、万年筆とどこがどう違うのか、なにをどのように変えたら使いやすくなるのか、充分に相談して調整を依頼することをお勧めします。

    字を拝見したところ、もし私がこの万年筆をペン習字に使うのであれば、ペン先を少し寄せてもらって様子をみながら、少し研ぐことで、スリットの内側の面取りを減らしてもらいます。そうすることで、書いた時の抵抗感が増え、力を抜いて書いた時により柔らかい表情が出るようになると思うからです。

    私は大橋堂の万年筆を購入して4年くらいになりますが、今でも手に取るたびに幸せな満足感に浸っています。
    繰り返しになりますが、くれぐれも、ご自分で納得がいかない時点ではペンをいじらないようにしてもらって下さい。「試しにやってみようか」ということをやると、必ず後悔します。

  4. uta より:

    >>ペリー さん
    コメントありがとうございます。

    ペン習字用途ですと、今の状態からわずかに
    インクフロがー渋くてもいいと思っておりまして、
    そういった調整もしてくださるのなら、
    催事のハガキが届いたときに相談してみようと思います。

    ペン先調整は、沼の世界というか、
    何本かは台無しにする覚悟がないと手を出してはいけない、といった先入観があります。
    どのペン先も大事ですので、これからも手は出さない予定です。
    ご忠告ありがとうございます。

  5. ペリー より:

    重ねて失礼します。ご存知かとも思いますが・・・
    もし、国産の染料インクをお使いでしたら、染料ではペリカン4001の黒か、あるいは極黒のような顔料インクにすると幾分フローがおさえられて使いやすくなるかもしれないと思いました。
    顔料インクは危険だと言われることが多いので、先日大橋堂のメンテナンスで聞いてきたのですが、顔料インク使用による修復不能なトラブルは過去に一度もないそうです。
    私自身、プラチナの顔料インクは30年くらい、極黒も発売当初から万年筆に使っていますが、少々ペン先を乾かしてしまったくらいでは、軽く洗えば回復しますし、万年筆の調子が悪くなったことは一度もありません。極黒は、パイロットカスタム742SFMに一ヶ月、セーラーレクルに2週間、一度も使わずに放置したことがありますが、どちらも問題なく書き出せました。

    大橋堂のペン先ですが、セーラー製なのでセーラーの同じサイズのペン先と交換して使うことも可能です。
    しかし先端の玉の仕上げが独自のもので、通常のメーカーのものは60度前後の筆記角度で書きやすいように研磨されていますが、
    大橋堂はほぼ球形になっています。そのため、多くのメーカーで言う正しい角度で書いたらヌラヌラと書き心地が良いということがないかわりに、どのように傾けても筆記線が付いて来てくれる楽しさがあります。私は、普段より高い位置を持って、立てて大きめの字を書いて、開放されたような気分をたのしんでいます。

    釈迦に説法で恥ずかしいかぎりですが、もしご参考になることがあればと思い、書かせていただきました。

  6. uta より:

    >>ペリーさん

    フローがおさえられるインク情報、たいへん助かります。
    これまでセーラーの純正カートリッジインクを使用しておりました。

    ペン先の状態もそうですが、インクとの組み合わせも軽視できない要素と思っておりまして、
    しかし、顔料インクは目詰まりが心配で、万年筆と心中する覚悟もなく、これまで敬遠しておりました。

    大橋堂さんのお墨付き?とあれば、同メーカーの極黒を試してみることにします。
    情報をシェアしていただき、ありがとうございます。

    ちなみに、「趣味の文具箱 vol.11」によると、もっとも粘度が高いインクはプラチナのカーボンブラックとのことでした。
    「カーボンペン」というデスクペンで試してみたところ、たしかに渋いインクフローとなり、求めていた線質に近づきましたが、紙によってはひどく滲むという結果になり、やむなく候補から外しました。

    一概にインク粘度が高ければペン習字に適した線質を実現できる訳でもないようで、
    万年筆とはつくづく奥が深い、深すぎる世界だなと感じております。

  7. ペリー より:

    utaさん、こんにちは。
    インクの話、もう少しおつきあいお願いします。入手しやすいなかから黒インクなどで使っているものについて書きます。
    プラチナとセーラーの顔料インクですが、セーラーの極黒はまっ黒ではない、乾きが遅い、乾いたあとも濡らすと少し水に流れる、インクが厚く溜まると光沢がでる、にじみや裏抜けが少ない。一方プラチナは、セーラーより黒い、乾きが早い、乾いたらほぼ水に流れない、にじみや裏抜けが多いといった特徴があるかと思います。
    プラチナはメーカーサイトによると、プラチナの顔料インクどうしを混ぜると色は濁るが、それでも安全に使えるということなので、わたしはこの2年くらい混ぜて使っていますが、今のところ快調です。もともとの茶色や青のインクもきれいですが、手帳に二色使うとき、にぎやかになり過ぎるので、お互いを少し混ぜて灰色に近い青や渋めのセピヤに作って愛用しています。また、青にわずかに黒を混ぜると、ほんの少し青みがかった黒が出来て、これはこれで字が引き立つような気もします。
    粘度はよくわかりませんが、同じペンに入れて比べると、今は幾分セーラーの方がフローが良いようです。以前は逆でしたからセーラーが改良したのかもしれません。

    染料インクの黒はプラチナのミクサブルインクのスモーキーブラックが墨の雰囲気がして好きなんですが、ややこげ茶寄りの黒かもしれません。フローは良いほうです。
    以前はウォーターマンが真っ黒でしたが、今は持ち合わせがないので分かりません。ロットリンクも同じくらい黒かったのですが、ちょっと検索したところ、アートペン用のカートリッジしか見当たらないようです。
    染料インクで他には、現在のペリカンの4001黒はフローもやや渋めで値段も安いし、いくぶん青寄りにも見えるすっきりした黒です。昔の4001の黒は、薄めると緑がかったグレーが目にやさしくて、10年以上ノートで使っていたのですが、今の4001黒は薄めても黒です。仕方ないので、セーラーのジェントルインクを混ぜて緑がかったグレーを作っています。しかしジェントルインクは、基本色を廃盤にしたり、微妙に色味を変えて再販するのでやっかいです。なお、ジェントルインクが混合しても安全なことは、メーカーの販売員やインク関係書に5回ほど確認しています。

    長くなってすみません。なんだか混ぜこぜの人生です。

  8. uta より:

    >>ペリーさん

    黒インクにしても本当に色々な種類がありますよね。

    セーラーの「極黒」は、商品名のイメージが先行するせいか、思っていたほどの黒ではなく、少し残念だった覚えがあります。
    ボトルで保管してあったので、コンバーターを購入して試してみます。

    インクの調合って一般の人でも出来るものなのですね。
    てっきりインク工房で職人の方にブレンドしてもらうものとばかり思っていました。
    「ミクサブルインク」「ジェントルインク」ですか。覚えておきます。

    あまり物を増やしても消費できず、ダメにしてしまうので、次にインクを買うとしたら、
    ご紹介されていた「ペリカン ボトルインク 4001/76 ブラック」これにしようと思います。
    こちらもフローが渋めになるようで、次の楽しみにしておきます。

    当初、ブルーブラック(古典インク)も候補にしていたのですが、
    色合いの関係で黒色に絞ると、生きている間には正解に辿り着けそうです。