ペン習字で動きのある線を書くためにはどうすれば?

通信添削の講評欄で次のような指摘が書き込まれていた経験はありますか。

  • 「もっと線に動きが欲しい」
  • 「一線一線の筆圧の変化」
  • 「動きのある字形を」

練習時はそれなりに書けても、本番になると線に躍動感が伴わない悩みの解決法について「もしかしてコレではないだろうか」と思うところがありましたので、現段階で分かる範囲をお伝えします(中・上級者向けの内容です)。

小指球を支点とした運筆法がある

伸びやかな線を書くにあたっては、ペンの持ち方(特に力の入れ方)を見直すだけで状況が好転する可能性があります。

何よりもまず指先をニュートラルな状態に保つ必要性に気付いたのは、「小指」について言及したブログ記事を読んだことがきっかけでした。

大きな赤丸部分が小指球

(大きな赤丸が小指球と呼ばれる箇所)

読んだ記事のどれもが小指球しょうしきゅう(小指側の手のつけ根部分)の重要性について説いており、

  • 小指球に意識を置くことで親指と人差し指の動きがより軽やかになること
  • 反対にペンを持つ3本の指が力んでしまうと、線の抑揚や運筆に制限がかかってしまうこと

この点を理屈として理解できたおかげで、清書時の「手のこわ張り」や「力み」は、ほぼ表れなくなりました。

参考になったブログ記事をいくつか紹介していきます。

指先だけで書こうとせず、手のひらの小指側の付け根を支点にして、手全体を自由に動かして書く。指先だけで書こうとすると、窮屈になってしまう方向への曲線は、手のひらの小指側の付け根を支点にして、ペン先をひねるようにして書くとよいということでした。

桜井紀子先生のペン習字講座に参加してきました | みちくさ通信

みちくさ通信のブログ記事では、くりぼんさんがイベント講座を受講して気になった指導ポイントについて書かれています。

個人的には、桜井紀子先生の指導ポイントがベストアンサーでした。

小指球を支点とした書き方が立体感のある運筆と関係するなんて普通はまず思いつかないですよね。私はこれまで線質に結びつく要素は「指先の微妙な力加減」や「繊細な関節運動」にあるとばかり思っていました。

でも小指球を支点とした力の流れを利用すると、この一箇所を駆使するだけで上下・左右・奥行き、すべてのペン運びが出来るようになります。

書き方の違いを比較してみると

従来の書き方とどう変わったのか図にしてみました。

「8」の字を横向きにして書いたときの各部分の動きを比較してみます。

指先のみで書いたときのストローク

指先のみで書いた場合、もっともよく動く箇所は、当然ながら各指の関節部分です。これらの動きを詳細に説明するのはとても困難です。

指先のみで書こうとすると、タテの動きに対しては人差し指がもっとも機能するため、土台となる小指の位置は上下には動きません。ヨコの動きに対しては、ペン先の動きに対して小指が左右に少し引っ張られるような感覚があります。

このとき小指球は固定した状態でも難なく線が書けます。

感じるデメリット

連綿を書く場合、ニ字目、三字目と下に向かうほど、ペンの尻軸がお辞儀をするような形となり、線質や字形が歪んでしまう。

小指球を支点としたときのストローク

小指球を支点とした運筆法は他の人にも説明しやすく、シンプルな動きです。それは例えるなら「歯車」です。

小指球を起点とした動きが小指に伝わり、小指を動かしたストロークがそのままペン先の動きに反映される、という説明が私の中でいちばんしっくり来ます。

小指球の皮膚のたわみを利用すると、わずかながら自在に動きますので、その力をペン先に伝えるイメージで書くと、実践しやすいです。

動画を見た方が分かりやすいと思うので、ちょっと探してみました。ありました。

「ペン字の書き方」というタイトルのYouTube動画です。

指先にほとんど力が入っておらず、手全体を使って書いている点がよく分かると思います。

この基本型に指先の動きを加味すると、小指の動き(ストローク)は小さくなります。

筆圧をかける際に負荷がかかる箇所

(小指球の皮膚のたわみを利用して大らかにペンを運ぶイメージ。もう1つの土台となる小指の第一関節を滑らせながら運筆を行う)

小指球を支点とした運筆は、一画書くごとに肘と連動する感覚があり、線を書く方向へ上半身も動いてしまうような楽しい筆記感があります(書きながら静かに踊るような感じ)。

おそらく「毛筆的な運筆」に近い書き方なのだと思います。毛筆的な所作を硬筆に取り入れると、小指球が大事な箇所になるんだよということですね。

なので、書道の経験がある方にとっては特段珍しい書き方ではないかもしれませんし、私の場合は、硬筆オンリーでやってきたので、新しい発見になりました。

小指球を支点とする書き方を実践してみて

複雑な指の動きが単純化される上に線質も劣化しないようで、今まで複数の糸で操っていた人形が、実はタコ糸一本で操作できると知ったときは、大きな衝撃を受けました(指を動かさなくてもペン習字はできる!?…と)。

加えて、指先にかかる負荷もかなり下がるので、疲労感を軽減する書き方としても最適です。

線の抑揚を表現するコツ

運筆に作用する指先の動きを単純化すると、

  1. ペン先をわずかに押し込む
  2. ペン先をかすかに抜く

といった、線の奥行きを表現する書き方を早い段階で実践できるようになります。

もちろん指先に宿るきめ細やかな表現力もペン習字には欠かせない要素ですので、「繊細な関節運動」も並行して鍛えたいところです。

導入してからまだ1ヶ月程度なこともあり、確信をもってお伝えできる情報は正直少ないです。でも本当に良い気付きをいただいたので、現段階で分かることをまとめてみました。

その人にしか分からない感覚的な書き方というよりは、誰もが実践できるテクニックとしての書き方だと思います(そうでないと、この方法を知りようがなかった)。興味のある方は試してみてください。

補足・参考リンク

「何を言ってるのかよく分からないよ」と思った人は、やや長いですが次のブログ記事を読んでみると、理解が深まるかもしれません。

小指の下にある小指球という筋肉を使い、肘との連携が取れれば、コントロール力が増すという。

実際に試してみると、手が楽になり、自然に安定した線が引ける。

【ゴルフと書道、上達の共通点】 | 書道のはな*みち

『まっすぐな線が引ければ字はうまくなる』で私の中では有名な高宮先生のブログ記事。スポーツにも共通する小指球の働きについて言及されています。

ペンで字を書く時、小指を少し曲げて、つまり小指側の筋肉を少し収縮させてしっかりとした支えをつくることによって実際にペンを握って操作する親指と人差し指の動きが軽快で自由になります

ペンを握る親指と人差し指にギュッと力が入ってしまい筆圧が強くなってしまう人は、しばらく字を書いていると手が痛くなりますが、それは動作を行う指も動作を支える指も同じになってしまうからです。

すらすらと字を書くためには小指側の筋肉をしっかりした状態にした上で字を書き続けることがポイントになります。

(中略)

作業をするのは親指と人差し指の役割ですが、つかんだものを安定させるのは小指の働きです。

そう考えますと、あまり大した役割はしていないように見えてしまう小指が、実は非常に重要な働きをしていると言うことができます。

(中略)

からだの筋肉は必ず連動して作用するという特徴がありますが、その一つに拮抗関係があります。それは一方の筋肉が収縮する時は必ず他方の筋肉が弛緩伸張するという筋肉のシステムです。

手の小指を曲げて小指球を収縮させますと母指球がゆるんで親指や人差し指側の筋肉が解放されるような感覚が得られます。親指と人差し指を曲げて母指球を収縮させると小指球がゆるんで小指、薬指、中指が解放されます。

そして解放された指が自由に動けるようになります。ですから手首を柔らかくして太鼓を叩く、箸を使う、ペンを使うためには親指と人差し指が自由に動けるように小指球を収縮させる必要があるということになります。

からだの使い方①‥手の握り方‥字を書き続けると疲れる | ゆめとわのblog

こちらのブログ記事では、整体師の視点から小指に軽く力を入れる理由について解説されています。

ペンの持ち方をもう一度復習してみませんか

小指球を支点とした運筆法を実践するにあたって、冒頭にも書きましたが、まずは指先の力を最大限に抜き、必要な時だけ最小限の力が加わるペンの持ち方を身につけると、線の抑揚表現の幅が広がり、より効果的です。

この持ち方は、指先が脱力した状態だけれども、芯はまっすぐ通っており、なぜか線がブレない感覚があります。その鍵は「小指」にあります。

といった諸々の解説を「正しいペンの持ち方について調べてみた」で紹介していますので、よかったら読んでみてください。

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