日ペンの師範試験に合格しました。この資格をどう活かすかについて考えます

師範試験の合格通知

私が所属している日本ペン習字研究会(日ペン)では年に1度、師範試験があります。

日ペンで師範位が取れる部門は3つあり、

  • 規定部
  • 筆ペン部
  • かな部(ちらし書き)

このうち、日常的な短文を主な課題とした規定部の部門でこのたび師範位を取得することができました。

どのようにして資格を取得したのか、これまでの経緯を説明するとともに、後半は、この資格の活かし方について私なりの考えをまとめてみました。

日ペンの師範位を取得するまでにかかった期間

これまでの時系列を簡単にまとめると、

日ペン ボールペン字講座を受講
2012年7月から2013年2月まで(約7ヶ月間)
競書誌『ペンの光』を購読
2013年2月から(約34ヶ月間)
師範位の取得
2015年12月

師範位を取得するまでにおよそ3年半かかったことになります。

昇段試験の結果通知書

私の場合、初心者向けの通信講座でもある「日ペンのボールペン習字講座」を受講するところから始まり、修了した後は、スライドする形で競書誌『ペンの光』に参加し、正式に師範位を取得したのが2015年12月でした。

日ペンは、師範位の取得が容易なの?

誤解を恐れずに言うなら、資格取得を推奨している民間団体の中では取りやすい部類に入るのではないかと思います。

私のペン習字遍歴

私が比較的短期間で師範位を取得できたのは、

  • 日ペンに入会するまでの下積み期間が7年ほどあったこと。
  • 師事している先生と通信添削によるやり取りができたこと。

といった要素以外にも、昇格試験全体の傾向として、書写の積み重ねを怠らなければクリアできる難易度になっている点が大きかったのではないかと思っています。

パイロットペン習字の7段昇格試験は、級位認定課題で培った知識がほぼ通用しない創作課題[1]となっている点に比べて、日ペンの昇格試験は日頃の競書課題にすべてのヒントが隠れています。

毎月の競書課題を提出する中で身につく地力が突破口となる仕組みになっているため、飛躍したむずかしさは感じませんでした。

ペン習字の基本は、形臨(字の形を真似ること)にあると私は思っているのですが、その基本要素に重点を置いているであろう日ペンから一種のお墨付きをいただけたのはこれからの自信に繋がりますし、「師範位取得が新しいスタートになる」という表現が正にふさわしい資格でもあると思います。

かかったお金の話

下世話な話になってしまうのですが、金銭的な側面についてもあえて触れておきます。

級位・段位の認定順序

日本ペン習字研究会が発行している『ペンの光』で師範位を取得しようと思った場合、10級から5段までは審査費が無料となっています。

つまり、5段に上がるまでの金銭的な負担は、購読料のみです(教室に通っている人は、月謝代も含みます)。

5段より上へ昇格していくには、月例課題を提出する他にも年に数回実施される昇格試験に合格する必要があります。

5段 → 推薦 へ上がるには
3月号 もしくは 9月号で発表される昇格試験に合格する。
受験料(3,240円)
推薦 → 準師範 へ上がるには
3月号 もしくは 9月号で発表される昇格試験に合格する。
受験料(3,240円)
準師範 → 師範 へ上がるには
三段以上で日ペンの講習会に参加し、受講証明書をもらう。
受講証明書を取得した上で、9月号で発表される昇格試験に合格する。
準師範 → 師範 にかかるお金
講習会の参加費用(8,100円)
師範試験の受験料(11,800円)
試験に合格した場合の登録料(54,000円)
合計(73,900円)

数字だけ見ると、気軽に払えるお金ではないことは確かです。

この負担額をどう捉えるか。硬筆を専門とした他の競書誌と比べると、日ペンの場合、最後の師範試験で大きな支払いが発生する構造になっています。

他の競書誌はというと、1級に昇級するまでは審査費が無料、段位クラスからはその都度、受験料が発生するケースが多く、また、パイロットペン習字のような「8級B」「8級A」といった細かい区分けを段位にも設けているところもあり、長い目で見ると金銭的な負担は、それほど変わらないかもしれません。

どの団体も収益を得るための構造はしっかりしているなという印象です[2]

その点でいうと、文部省が後援する硬筆書写検定は、1級の受験料(5,500円)の中に審査費から登録料まで含まれています。

硬筆書写検定の資格取得を前提として競書誌を購読し、師範試験はあえて受験しない、といった学習方法もひとつの選択肢になってくるかと思います(その分、難易度は高くなります)。

師範試験に合格して変わった意識とか

「師範」という名前に焦点をあてると、たいそう立派な響きですが、やってのけたことといえば、日ペンの書風を緻密に再現し、審査員の方々から合格点をいただいただけなわけで。

憧れのあの場所にたどり着いたというよりも、長い道のりを歩んでいく上での土台らしきものを築けたという印象が強いです。

私の中でペン習字におけるゴール地点はいくつかあると思っていて、そのひとつが硬筆書写検定の2級取得です。

関連記事)硬筆書写検定2級合格がひとつの節目となる理由

培った技術を「見える形」として残すことで、外部から評価してもらえるだけでなく、自分自身も「途中下車するのにふさわしい地点」なのだと納得できるのが、認定試験の合格であったり、資格の取得であったりします。

そういった意味では、民間団体の師範位取得もひとつの大きな分岐点になります。

硬筆書写検定の2級取得とはまた別の見晴らし台に立つことになるので、恐らくそこから見える景色は、今後の人生にさらに深く関わる眺めとなるはずです。

師範位を取得した後の分かれ道

思うのですが、ペン習字を長期間に渡って継続している人は、当初のきっかけである悩みをそれなりに解消していて、それとはまた別の目標なり楽しみを見つけて取り組んでいる人が多いように感じます。

ペン習字を始めるきっかけというのは、たとえば、

  • 「悪筆に対するコンプレックスを何とかしたい」
  • 「仕事柄、代筆を頼まれる機会が多くて困っている」など

保育園に勤めている方ですと、親御さんと交わす連絡帳の記入を心苦しく感じるケースがあったり、逆の立場として幼稚園の先生に自分の字を見せるのが恥ずかしかったりと、そういった当初の悩みを解決した先に見える進路には、およそ3つの道があると考えます。

  1. やりたかった他の物事に注力する。
  2. 更なる書字能力の向上に努める。
  3. 収入を得る糧とする。

もう少し具体的に説明してみます。

やりたかった他の物事に注力する

これは、終着点となる目標を予め設定しておき、それが達成できたら次のやりたいことに興味を注ぐ、という道ですね。

自己評価と他者評価がバランス良く満たされる資格や認定証の取得がその目安となりやすく、実利を得たらそこで打ち止め、あえて深入りはしないという考え方です。

更なる書字能力の向上に努める

飽くなき探究心のもとに、購読する競書誌の数を増やしたり、はたまた毛筆の分野にも足を踏み入れたり、興味の赴くまま書字の分野に没頭する進路がこちらになります。

ペン習字の経験年数に関わらず、筆記具や蔵書がどんどん増えていく人はこの傾向にあるようです。

収入を得る糧とする

硬筆を専門とする民間団体の師範試験や硬筆書写検定1級に合格すると、ペン習字の技術で収入を得るという道が開けます。

日ペンの場合、師範試験に合格すると、後日送付される書類の中に「支部教室の登録申請書」と題した文書が同封してあります。

本人にその気がなくても、団体公認のもとで「あなたが希望するなら、教室を開講できますよ」といった内容の文書を目にするわけで、否が応でも「人に教える」という選択肢について自問することになります。


(ここから先は、「師範位の取得をきっかけに何らかの形で収入を得られたら」と、ぼんやりながらも真剣に考えている人に向けて書きました。

この業界で収入を得る仕組みを作ろうとすると、「清貧の思想」を自分なりにどう克服するかが最初の課題になってきますが、それはひとまず置いておき、「書字の技術を活かしてどういった形で社会に貢献できるのか」といった点についてまとめました。

たかが師範の成り立てで生意気なことを語っていますが、ずーっと考えてきたことでもあるので、興味がある方はお読みください。)

「師範」という肩書きをどう活かすかという話

実際問題、「いや、私はまだまだ勉強が足りません」そう思う人が大半でしょうし、指導者の立場となるのは、ペン習字を継続していく上で数ある選択肢のひとつにしか過ぎません。

ただ、「ペン習字を通して自分はどうありたいか」という根っこの部分を見直す発端にはなるはずです。

「どうありたいか」にフォーカスすると、やりたいことが見えてくる

「自分にとってのペン習字」を明確にする作業は、おろそかにしてはいけない大事な作業だと私は思っていて、特に昇級の喜びをモチベーションの糧にしている人にとっては、燃え尽き症候群の予防策にもなります。

これは私が師事している日ペンの先生から聞いた話なのですが、師範になったことでほとんどの人は満足してしまい、それ以上習うことをやめてしまうそうです。

その結果どうなるかというと、書写技術の維持はおろか、どんどん力を落としてしまう実情があると嘆いておられました。

これは一種の燃え尽き症候群ですよね。

「私は師範になる」という大きな目標を掲げ、その一点に献身的な努力を捧げて成し得たのはいいけれど、更に打ち込める対象を見つけられず、徐々にその道から遠ざかってしまうケースです。

師範位取得による負の功罪は少なからずあるのは確かで、だからこそ「ありたい姿」を明確にした方が結果的に長続きするだけでなく、その先にあるその人だけの選択肢がはっきりと見えてきます。

導き出した根源を大切にする

「私にとってペン習字とは?」この自問を繰り返すと、書字に対する信条らしきものが見え、おそらくそれは2つの大きな思想に分かれるのではないかと思います。

その2つの思想とは、

  • 「自分のためのペン習字」
  • 「人のためにもなるペン習字」

どちらか一方に振れる人がいれば、半々の人もいるでしょうし、その比率は人によってまちまちです。

どちらが良いか悪いかの話ではなく、これは当人の人生観や生活背景を反映した結果、導き出される志になります。

言い換えるなら「私はこの方針でもってこれからもペン習字を続けていくのだ」という意思表明です。

たかが習い事に対してそこまで考える必要はあるの?という気もしませんが、「人のためにもなるペン習字」この思いが強い人ほど、気持ちの棚卸しは必要になってくると思います。

「年齢」「家族構成」「今の働き方」「1日に使える自由な時間」「仕事に求める待遇」「家族と過ごす時間」「出産・育児による途中離脱 → 再就職した際のキャリアプラン」「そもそも理想とする働き方とは」などなど、様々な観点から「未来の私はどうありたいか」について深掘りしていくと、その先にある「ありたい姿」が見えてきます。

それをペン習字(人によっては書道)と絡めて考えてみてください、というお話です。

「じゃあ、お前はどうなんだ」という話

私の場合は「自分のためのペン習字」が6割、「人のためにもなるペン習字」が4割の構成で今の習い事を続けています(2016年現在)。

「自分の楽しみを優先しつつも、後進の方々が迷わず進んでいけるように」という気持ちを形にしているのが「ペン字いんすとーる」であり、これは「人のためにもなるペン習字」にも繋がっていると思っています。

私の場合、2つの思想がどちらか一方に偏ると、途端に「何のためにペン習字をやっているんだろう」という疑念が生まれて、フェードアウトしていくことが容易に想像できます。

私にとっての「ありたい姿」とは、「書字技術の向上を目的とする一方で、これまでの経験をなるべく分かりやすくまとめて情報発信する」これを理想の状態としています。

「自分の経験を人のために役立てたい」ひとつのモデルケース

「人のためにもなるペン習字」この思いが強い人ほど、社会に対して価値を提供しやすく対価も得やすいのは確かです。

その一例として参考になるのが、「カクミル」という美文字教室を運営されている山田さんです。

参考リンク)起業のきっかけ - 山田ひろ子さんの起業story

この方は、ご自身の辛い経験を通して「心の底からやりたいこと」「本気で頑張ってみたいこと」が見えたと仰っていて、私の中でこれは共通しているなと感じることがひとつあります。

起業するにあたって大切な理念とは

私が住んでいる地域では、3.11震災後の復興に関するニュースがよく流れるのですが、皆さん口々に仰るのは「微力だけども、何らかの形でこの地域に貢献していきたい」といった主旨の言葉なんですね[3]

ある種の衝撃的な出来事を体験した人の職業観には「人の役に立ちたい」という思いが前面に出ているようで、これは何も無意識のうちにそのような思いが芽生えるのではなく、「困ったときはお互い様」を圧縮したような人との繋がりを経験して生まれる感謝の表れだと私は思います。

上で紹介した山田ひろこさんも含め、「人の気持ちに寄り添った商品やサービス」を自然と提供できてしまうのがこの人たちの強みです。

参考リンク)お子様連れOK!の講座を開きたい理由。 カクミル@美文字になるペン習字

これは、セブン&アイ・ホールディングスのCEO鈴木敏文さんが提唱する”「お客様のために」ではなく「お客様の立場になって」”を実践できている状態でもあり、客層の気持ちや価値観に基づいて行動できる人は、あらゆる局面で粘り強いです。

もし書字の技術で収入を得たいと考えているなら、自分本位ではなく、顧客本位のサービスを提供する視点は絶対に外せないポイントです。

逆にそこまでの情熱を注ぐ自信がないときは、起業もしくはプチ起業を選択するのは早計ともいえます。

書字で収入を得る方法は他にもある

先ほどのモデルケースは、「硬筆師範の免許取得」を活かした「指導教育」による「教室運営」といった仕事の類になりますが、端正な字が書けることで提供できる商品やサービスは他にもあります。

代筆 × 小筆(筆ペン)
筆耕業
悪筆の矯正 × ペン習字
オリジナル教材の作成
手紙用品 × ペン習字
一筆箋を使ったワークショップ

などなど。

「書字の技術」と「持ち前の特技」を組み合わせる方式で発想してみると、ざっくりとした商品の形が見えてきます。

さらに場所・フィールドを掛け合わせることで、具体的な活動拠点が見え、個人的には、インターネットを利用した宣伝・集客は効果が高いように感じます。

ここ数年の動きを見ると、minne(ミンネ) を始めとしたハンドメイドの市場が急速に広がっています。これは、インターネット(特にスマートフォン)の普及により個人が販売活動していくにあたって必要な環境が整ったことを示唆しています。

「仮にペン習字のオリジナル教材を作成したところで、どうやって売ればいいの? どうすれば必要とする人に届けられるの?」といった悩みも、今では個人で開けるオンラインストアが簡単に作れますし、書店の練習本にはない切り口で教材を作成すれば、少ないながらも一定の需要は見込めます。

また、「筆耕業は食えない仕事」[4]といった風説も、現在では個人サイトを持つことで地域を限定せずとも営業や集客が可能になり、自分の強みを活かしやすい時代になりました。

理想とする働き方は実現できる?

実績もないのに「師範」という資格の活かし方について図々しくも言及したのは2つ理由がありまして、

  1. ペン字や書道を仕事にする方法が現状、ほとんど整備されていないこと。
  2. 女性の多様な働き方のひとつとして、この資格は十分に活かせること。

といった事柄が関係しています。

書道・ペン字を仕事にするにあたって、参考にできる情報がほとんどない現状

師範の免状取得を考えたとき、今後の人生にどのような影響があるのか想像して気分が高揚した人はたくさんいらっしゃるのではないかと思います。

現に私も師範試験の合格後、「人に教える器ではない」と自覚しつつも、書店内の「開業」に関する書棚に足を運びました。

何か足しになる情報でも見つかればと思って探してみたのですが、大衆的な習い事として認知度が高いはずの「書道教室」に関する本ですら1冊もない状況でした。

考えてもみれば、書道・ペン字に関連した独立ノウハウってそう簡単に手に入る環境であってはならない下地がそもそもあるような気がします。

特に書道は、文人墨客のごとく粛々とその道を学び続ける崇高な世界があり、そういった閉じた空間の出来事を仕事にするのは、考えついても実行に移すのは至難かもしれません(自らブレーキをかけてしまう意味でも)。

少なくとも私がペン習字を続けてきた10年の間に、収入に繋がるであろう情報に触れたのは、『ペンの光』で掲載された「会員研修の講演」をまとめた連載くらいでした。

簡単にその内容をまとめておくと、

『ペンの光』2015年5月号(p30)
子育てする中で指導するきっかけを得た話とその後、活動が発展していく様子。
2015年6月号(p24)
他教室との差別化を図るにあたっての工夫とその指導法の紹介。
2015年7月号(p26)
書写検定の受験を取り入れた教室運営、特に学生部における受験級の目安の紹介。
2015年8月号(p28)
教室を開くにあたっての集客方法と運営に必要な志について。

こういった経験談は、ネット上でもいくつか見つかりましたが、収支に関する話になると、その方と密な関係にならない限り知る手立てがないのが実際です。

ただ、最近の流れとしては「書道・ペン字教室を開業する方法」を同業者の方が支援する動きがあるようで、都市部に足を運ぶ手間さえ惜しまなければより具体的な話が聞ける環境にはなっています。

参考リンク)書道教室運営&開業コラム - 東京・表参道の書道ペン字筆ペン教室 my MOJI(まいもじ)

個人の運営ノウハウを授けてもらえるという意味では、このような講師養成コースの料金は妥当な金額だと思います。

私としては、もっと気軽に手に取れる情報があってもいいと思っていて、このサイトからも集客に役立つ知識を何らかの形で発信していけたらと考えています。

もっと多様な働き方があっていいと思う

「女性を取り巻く労働環境って全く改善されていないよね」といったわだかまりが、この記事を書いた発端でもありまして、元を辿ると、2年ぐらい前から視聴しているEテレの「ハートネットTV」[5]がきっかけになっています。

特に母子家庭の現状を取り上げたテーマが衝撃的でした。

経済的に苦しい生活を送っている家庭に対して一部で自己責任論を唱える人がいますが、私は「一歩踏み間違えたら誰もがこういった状況に陥ってもおかしくない」と思っています。他人事じゃないんですよね。

テレビで放送されるようなケースを目の当たりにすることはないにしても、最近では「マタハラ」という造語が生まれたり、「育休を取りづらい職場環境」「保育園に入所するまでの高いハードル」「3歳・小1の壁」「時短勤務による同僚からの妬み、嫌味」など、女性の働きづらさは以前から水面下ではびこっています。

そういった諸問題により、社会との接点をいちど失ってしまうと復帰しづらいのがこの国の特徴で、それを示すような統計やデータが内閣府のサイトにありましたので、少しご紹介します。

年齢別に見た女性の労働力率

各国における年齢別に見た女性の労働力率

「ひとりひとりが幸せな社会のために」| 内閣府男女共同参画局より

女性の労働問題を端的に示したグラフとして「M字カーブ」がよく取り上げられます。

アルファベットの「M」を描くグラフがどういった状況を表しているかというと、

  • 高校・大学卒業後の20代前半までは就業率が上がり、
  • 20代後半からは、結婚・出産を期に会社を退職し、
  • 子育てが一段落する30代後半から再就職する人が増える。

この国における一般的な女性のライフサイクルのようにも見て取れますが、「M字カーブ」の何が問題か、次のグラフが示しています。

「M字カーブ」から見る仕事を希望する人の数

女性の就業希望者

「ひとりひとりが幸せな社会のために」| 内閣府男女共同参画局より

2つの折れ線グラフの間にある黄緑色の面積が、「就業希望者」を示しています。

オレンジと緑の数字を比較して開きがある年齢層ほど就業希望者は多く、

これはつまり、“出産や育児を機に会社を途中退職した(そうせざるを得なかった)けれど、できれば早いうちに働きたい(働かざるを得ない経済状況にある)。なのに、働き口が見つからない(子供の預け先を確保できず働けない)”(特にアラサー世代から40代の女性)そんな状況を表しています。

就業希望者のうち、7割が非正規雇用を選ばざるを得ない現実

女性の就業希望者の内訳(平成24年)

女性の就業希望者の内訳(平成24年) | 内閣府男女共同参画局より

しかも、その就業希望者(303万人)のうち、およそ7割の人が非正規での仕事を探しています。

グラフの項目には、「希望する就業形態」とありますが、誰だって安定した雇用を望みますよね。出来れば正社員、正職員として採用されたいです。

でもそういった雇用先が見つからず、国の法整備も影響してパートや派遣といった雇用に流れている現状を表しているのがこの円グラフです。

性別役割分業が社会に組み込まれた日本では、女性を専業主婦か非正規労働へ誘導する配偶者控除や年金の第3号被保険者制度がある。

『河北新報』扶養に依存、経済的な自立困難 (2016/02/02)

夫の扶養に入っている人の税金対策として、意図的に収入を抑える考え方もあります。

「配偶者控除の条件となる年収103万円以下」[6]もしくは「被扶養者の健康保険料・国民年金の負担額がゼロとなる年収130万円以下」[7]など。

こういった節税の方法を利用することで「扶養される側が経済的に自立する道を絶たれる」というのもなんだかおかしな話です。

おわりに

変わった捉え方になりますが、職業訓練として見たとき、書道やペン習字は、なんと時間や根気が必要な分野なのだろうと感じます。

設立して数年も経っていない民間団体の講習会に数日参加した後、インストラクターとして認定してもらえる資格と比べたら、鍛錬の度合いが違いますし、女性が9割の習い事であるだけに、磨き上げたスキルを眠らせたままにしておくのは、個人的にはもったいないなと。

軽々しく「書道やペン習字を仕事にしよう」と言うつもりはありませんし、礼賛もしていません。その人の人生に関わる大きな決断です。

ただ、上で取り上げたような女性を取り巻く労働環境を鑑みると、そういった働き方も選択肢の1つとしてあってもいいのでは、とも思っています。

自分の才能と適性を発見できることは幸運です。

その分野に打ち込むのはすばらしい喜びです。

父が子育て身代金を減額した話 - wHite_caKe

「辛いことや嫌なことを我慢して働くことが労働なんだよ」と親の働き方から教わった身としては、好きなことを仕事にするのは、どこか現実味がないようにも感じる一方で、それを実現している人はたしかに実在しているんですよね。

「誰にでも出来ることを誰にも出来ないくらい継続すると、そう簡単には真似できない技術になる」という言葉は、ペン習字や書道にもしっくり当てはまるなと思っていて、しっかりとした土台があれば、「実用」「作法/マナー」「POP書き」「遊書」「リハビリ/脳トレ」「代筆」と収入を得る方法の横展開は効きやすく、なにも「書写/書道を教える仕事」に限定する必要はないと思います。

「本業の合間にする副業」や「少人数形式で開くワークショップ」にしても、「じゃあ、どうやって行動に移すのか」この1点においては当人の決断・行動力に懸かっているわけで、その後押しとして、様々な本を紹介しながら「仕事にする形」を当サイトからもお手伝いしていけたらなと考えています。

  1. パイロットペン習字の昇格試験は、和歌・漢詩のいずれかを選び、作品の構成から布置、字形の組み合わせなど、全ての工程を自分の頭で考える自運課題となっています。 []
  2. 『ペン時代』に限っては、運営面を心配してしまうほど諸々の費用がかからない印象があります。 []
  3. 逆境を乗り越え、前を向いて生きる人たちが取り上げられる一方で、家族を失い、あの時から時間が止まったままという方も当然ながらいらっしゃいます。 []
  4. 筆耕業が食えないというのは、数をこなさないと稼ぎにならない歩合制による賃金制度が根底にあり、人から仕事を紹介してもらっているうちは報酬単価もそれだけ低くなります。
    そこから一歩先へ踏み出すには、独立して自分で販路を築かなければならなず、外回りの営業が苦手な人や、”技術があれば仕事は向こうからやってくる考え”を持った職人気質の人は徐々に淘汰されます。 []
  5. 「ハートネットTV」は、うつ病や重い障害など、現代社会のさまざまな「生きづらさ」について当事者目線から社会問題を掘り下げていく番組で、私はシリーズ「ブレイクスルー」が好きでよく見ています。 []
  6. パートによる年収が103万円以下の場合、所得税や住民税がほぼゼロとなります。(給与所得控除 65万円 + 基礎控除 38万円 = 103万円となり、控除額内に収まり、所得税はかからない)
    また、夫の所得税にも計算上38万円、住民税には33万円の配偶者控除が適用されます(夫の支払う税金が7万1千円~10万9千円安くなる)。 []
  7. 会社員・公務員の妻の場合、年収が130万円を超えると、扶養の範囲外となり、税金が1年あたり25万円ほど上乗せされます(この場合、年収150~160万円程度を目指さないと働き損になる)。 []
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