【現在6代目】代替わりを重ねる日ペンの美子ちゃんを貴重な研究本で振り返る

『なかよし』や『りぼん』といった少女マンガ雑誌の裏表紙に1999年頃まで掲載されていた広告マンガがありました。

ペン習字があらゆる場面で役立つことを布教しつつ、もれなく"日ペンのボールペン習字講座"をオススメするテンプレ9コマ漫画『日ペンの美子ちゃん』です。

「あーこれこれ、つい読んでしまってたアレ」的な懐かしさを覚える人は結構多いのではないでしょうか。

この記事では、かつての「広告マンガ」や「裏話」を集めた貴重な一冊『あの素晴らしい日ペンの美子ちゃんをもう一度』から歴代美子ちゃんの活躍ぶりを振り返りつつ、得体の知れない謎教材についてもその正体を解き明かしていこうと思います。

現在6代目まで襲名 歴代の美子ちゃん年表

歴代美子ちゃん 早わかり年表

「美子ちゃんは代替わりを繰り返していた!?」というところから説明が必要な気もしますが、実はそうなんです、美子ちゃんの絵柄が変わるごとに担当する先生が変わっています。

初代美子ちゃんが誕生したのは、昭和47年(1972年)。同じ年に日本ペン習字研究会(日ペン)という団体が「現代ボールペン習字講座」という通信講座を開講しています。

そのマスコットキャラクターとして日ペンの美子ちゃんが起用された経緯があり、45年経った現在も日ペン教材の素晴らしさを伝え続ける宿命を美子ちゃんは背負っています。

その熱心な布教スタイルはこれまで一貫してブレておらず、そろそろ職人芸の域に達しつつあるような気もしますが、いくつかの苦難も過去に経験しています。

押し寄せるIT革命の波には勝てなかった

年表を作成して個人的に気になったのは、美子ちゃん広告が掲載されていない期間が存在していたことです。

Windows95 を始めとした、ポケベルや携帯電話の利用が急速に広まったことも影響し、手書き文化の大切さを分かりやすく伝える狙いも兼ねていた広告マンガは、1999年にひっそりと最終回を迎えます。

思い返してもみれば、私が初めて自分用パソコンを手にしたのは、2000年代の初頭でした。

この当時、年賀状作成は家庭用プリンターで印刷した方がイケてる風潮があったり、交換日記のやり取りもいつしかEメールに取って代わったりと、IT機器が急速に普及し始めたあの時代を過ごした人は「いよいよ手書きを必要としない時代がやって来る」と誰もが薄々感じ取っていたように思います。

美文字ブームの到来により美子ちゃんが復活

10年以上もの低迷期を耐え忍び、転機が訪れたのは、「美文字」という言葉が2013年の流行語大賞にノミネートされたことがきっかけと記憶しています。

美文字ブームそのものは、よくある作為的な流行ではなく、火付け役ともいえる存在が地盤を強固に築き上げた結果、功を奏したと私は捉えておりまして。

「クルトガ」や「ジェットストリーム」など、各文具メーカーがしのぎを削って新製品を投入し続け、数年かけてようやく「使い良い筆記具の快適さ」が知れ渡り、加えて万年筆ブーム「美文字大辞典」といったテレビ番組も後押しとなり、手書き文化への回帰が進みました。

そこに満を持して手書き文字の伝道師「日ペンの美子ちゃん」というレガシーが登場してきたわけで、現在はSNS(ツイッター)に活躍の場を移し、ペン習字の布教活動を再開しています。

歴代美子ちゃんのプロフィール

あなたが知っている美子ちゃんは何代目?ということで、歴代美子ちゃんの略歴を紹介します。

初代美子ちゃん(1972年~1984年)

初代美子ちゃんの1コマ

(シュールなパワーワードが散見される初代美子ちゃん)

作者
画:矢吹れい子先生
コンテ:飯塚よし照先生
ペット
ニャンコ(ネコ)
好きなもの
西城秀樹、宝塚歌劇団、読売巨人軍、SF、指輪物語

初代美子ちゃんは、70年代の流行ファッションを着こなす、歴代でもっともお洒落な美子ちゃんです。

過去作品の1コマから、本名は「みかのはら美子」、東京都練馬区春日町に住む高校生ということが判明しています。

したためた招待状やラブレターで意中のイケメン男性を次々と落とす特技があり、その美しい書字で社長秘書としての職も手に入れます。さすが美子ちゃん。

その後、社内で知り合った男性と結婚し、夫もボールペン習字講座を受講することで重要な手書き書類を任され、部長まで昇進するというサクセスストーリーとなっていました。

「そんなバカな」と思う読者の気持ちを代弁しているのが脇役のペットです。

時にはシビアなツッコミを入れたり、教材を紹介するアシスタントも務めたりと『日ペンの美子ちゃん』の世界観を保つ調整役を担っています。

2代目美子ちゃん(1984年)

2代目美子ちゃんの1コマ

(この手紙は結局出さなかった奥手な2代目美子ちゃん)

作者
画:森里真美先生
コンテ:飯塚よし照先生
ペット
minmin(ウサギ)
好きなもの
ジュリー(沢田研二)

2代目美子ちゃんは、その活動履歴が定かではなく、1984年付近に1年近く連載を行っていたものの、当時の原画はほとんど残っていないようです。

初代の美子ちゃんよりもおしとやかな性格で、名実ともに幻の美子ちゃんとなっています。

3代目美子ちゃん(1984年~1987年)

3代目美子ちゃんの1コマ

(少年誌にも進出することを踏まえ、アニメ風となった3代目美子ちゃん)

作者
まつもとみな先生
ペット
ウサギネコ
好きなもの
チェッカーズ、少女隊、紅白歌合戦

3代目美子ちゃんは、色恋話が控えめとなり、代わりに手書き文字の存在を脅かす当時のOA機器とのバトルものが登場します。

ワープロのマイコとの対決回

今でいう擬人化キャラクターと対決し、手書きの方が優れている場面を相手に見せつけ、一方的に勝利するという新たな図式が生まれました。

4代目美子ちゃん(1988年~1999年)

4代目美子ちゃんの1コマ

(数々のバイト先でペン習字の利便性を布教する4代目美子ちゃん)

作者
ひろかずみ先生
ペット
ネコ
好きなもの
テリヤキバーガー、ケーキ、アルバイト
嫌いなもの
学力テスト、本人の自覚はないがド音痴で絵が下手

4代目美子ちゃんは、ずば抜けて美人ではないけれど、明るく愛嬌があって皆から頼られる世話好きな女の子といったキャラ設定になっています。

『日ペンの美子ちゃん』に登場するサブキャラの容姿を比較

(70年代と90年代の美子ちゃんマンガに登場するサブキャラを比較

初代美子ちゃんに登場するサブキャラは、主人公の容姿が引き立つ見た目を特徴としているのに対して、90年代の美子ちゃんに登場する人物は、みんな揃ってかわいく描かれており、これは読者の共感性を呼ぶうえで当時の世相を反映しているようにも感じます。

親近感を覚えるという意味では、今だと少し価値観が変わって、能力も見た目も普通もしくはそれ以下の主人公に焦点を当てたマンガやライトノベルが割りと多いですよね。

『日ペンの美子ちゃん』は、こち亀のような当時の世相を映し出す資料としても価値があるのかなとも思ったり。

5代目美子ちゃん(2006年~2007年)

5代目美子ちゃんの1コマ

(不運にも時代に恵まれなかった5代目美子ちゃん)

作者
画:梅村ひろみ先生
コンテ:たなかまさみ先生
ペット
ネコ

5代目美子ちゃんは、がくぶん公式サイトのウェブページ掲載に留まり、その掲載数もわずか2話のみと、ボールペン習字講座が冬の時代に突入しているらしい様子が伺えます。

6代目美子ちゃん(2017年~)

6代目美子ちゃんの1コマ

(今後の活躍が期待される6代目美子ちゃん)

作者
服部昇大先生
ペット
ネコ
年齢
45回目の17歳(2017年現在)

6代目美子ちゃんは、初代が誕生した頃からの記憶と永遠の若さを合わせ持つ特殊能力?が備わった異色の美子ちゃんです[1]

安倍首相に手紙をしたためる美子ちゃん

(安倍首相へハガキ値上げに対する抗議文をしたためる1コマ)

学生運動が盛んだった当時の記憶も残っているようで、ギャグマンガを手がけた作者の影響もあるのか、時事ネタのブッコミ具合が頭一つ抜けています。

(同業他社イメージキャラクター 夢の共演)

3話目の時事パロネタと比べて、リツイート数はあまり伸びなかった上記の2話目ですが、そんなほのぼの回にも、とある隠し球が仕込まれていました。

(2016年のユー○ャンCMソングにもなった「時よ」)

同じペン字通信講座として長年ライバル関係にある某大手の通信講座(和訳:あなたはできる)。

そのCMソングを2016年に星野源さんが担当した経緯を踏まえての上記パロネタだとしたら、いやいや、とんでもねえ6代目だと思いました。

(話数を重ねるにつれ、6代目美子ちゃんの破天荒ぶりに気づきましたが、そういうことでしたか…!)

星野源さんは、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのマルチタレントですので、旬のネタとして偶然かち合っただけかもしれませんが、原稿を手にした編集者の方は内心ヒヤヒヤだったのではないかと。

メディア掲載のギリギリなラインを果敢に攻めていく6代目美子ちゃんの活動が今後も期待されます。

「バインダー式のテキスト」「実用新案の練習器」とは結局なんだったのか

実際のところ、過去の広告マンガから日ペンのボールペン習字講座に申し込んだ人って、どれほどいたのでしょうね。

美子ちゃんのマンガはよく読んでいたけれど、お値段もするし、ラピスラズリの開運アクセサリ広告と同じ臭いを感じて二の足を踏んだという人は少なくないと思います。

日ペン独自の発明品を紹介する美子ちゃんと脇役ネコ

(3代目の美子ちゃんマンガから突如登場する謎アイテム)

特にこの「実用新案の文字練習器」の説明が足りなすぎて、余計に怪しさを醸し出しているという。

半年ほど前にヤフオクで文字練習器らしきものを見つけ、おそらくコレではないかと思うのですが…。

ビ・マスターの全容 その1

名前を「ビ・マスター」と呼び、掛け軸にも似た入れ物に方眼線を印刷したビニールシートが収納してあります。

ビ・マスターの全容 その2

方眼のタイプは5種類に分かれ、文字の大きさに合わせてビニール製の方眼を上からかざし細かく観察すると、正確に手本を書写できますよという代物です。

これはいわゆる、デッサン時にモチーフを正確に捉える「はかり棒」や「スケール」のような用途で使う補助用具ではないかと。

数年前に日ペンのボールペン習字講座を受講した経験がある立場からすると、実にこの団体らしい発明器具だなと感じます。

バインダー式のテキストを紹介する美子ちゃん

(テキストの内容には一切触れず、バインダー式であることを強調する美子ちゃん)

残念ながら、バインダー式のテキストについては正確な情報が見つからず、目の粗い布張りで2冊組(背文字が赤・青)の教材であったとのことです。

日ペンのボールペン習字講座 教材一式

現在の教材内容は一部改変され、書き込みやすい薄型テキストに変更されたり、講師の運筆を収録したDVDが追加されたりと、より使いやすい形にアップデートされています。

美子ちゃんと運命を共にする日ペンのボールペン習字講座も45年にわたって存続している点では、よく続いているなと驚くばかりです。

教材内に姿を表す大人の美子ちゃん

この講座の教材を改めて見返してみると、美子ちゃんの面影を随所に残しているんですよね。

教材内に姿を表す大人の美子ちゃん(拡大)

(大人になった美子ちゃん…!)

練習のコツを教えてくれる大人の美子ちゃん

通信講座内のテキストでは、大人になった美子ちゃんが練習のワンポイントをアドバイスする形で学習支援してくれます。

関連 日ペンのボールペン習字講座 私の所感

ちょっと無理がある過去作品 "きれいな字が書けると○○できます"

『日ペンの美子ちゃん』は、少女マンガ誌に的を絞った広告であったため、過ごした環境によっては認知度の差が多少あるようです。

最後に『あの素晴らしい日ペンの美子ちゃんをもう一度』に収録されているマンガをいくつか紹介します。

漫画『日ペンの美子ちゃん』(初代)

↑パターン1. きれいな字が書けると、宇宙人と交信できる

漫画『日ペンの美子ちゃん』(初代)

↑パターン2. きれいな字が書けると、エルフの国のお妃になれる可能性

漫画『日ペンの美子ちゃん』(3代目)

↑パターン3. ステキな字が書けると、紅白歌合戦の勝敗を左右できる

番外その1 4コマ漫画もありました

漫画『日ペンの美子ちゃん』(4代目)

(ワープロとは敵対関係にあるも、FAXには寛容的な美子ちゃん)

番外その2 美子ちゃんのパロディ漫画も

美子ちゃんのパロディ漫画『日ペソの美子ちゃん』

(元ネタのインパクトが強いせいか、多くのパロディ作品が生まれました)

6代目美子ちゃんを担当しているのは『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』というパロディ漫画を書かれた先生です。

起用にあたっては向こうからお声がかかったという、何とも珍しいケースだったようで。

でも、いちばん意外だったのは『日ペンの美子ちゃん』という存在がこんなにも広く認知されていたことでした。

美子ちゃんが6代目に代替わりしたといっても、その先にあるのは、ボールペン習字講座という商品の宣伝なわけで、しかしやれステマだと批判されることもなく、ごく自然な形で多くの人が広告マンガの再開に関心を寄せていたのがとても印象的でした。

たぶんこれがご当地ゆるキャラの2代目襲名だったら地元関係者ぐらいしか興味を持たないでしょうし、やはりそれだけの歴史を美子ちゃんが築いてきた実績も影響しているのでしょうね。

一意専心で物事に取り組むと、周りの人が気にかけてくれるという美子ちゃんの裏教訓がさらに広まるよう、今後も末永く続いて欲しいと願うばかりです。

出典・参考リンク

『あの素晴らしい日ペンの美子ちゃんをもう一度』 第三文明社 (2004)

日ペンの美子ちゃん【公式】Twitter

歴代美子ちゃんの漫画が読める公式ページ

  1. 6代目美子ちゃんのマンガはまだ始まったばかりで、今後どんな展開が生まれるかは未知数です。 []
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