小学校の授業で習った「かきかた」の学び直しが出来る通信講座を紹介します。
大人向けにアレンジした教材となっている点が特徴で、
- 初学者にやさしい一字ずつ学ぶ練習形式になっている。
- 社会人なら身につけておきたい清潔感が伴った読みやすい字が書けて、
- 硬筆書写検定3級の実技対策もできる。
そんなカリキュラムが組まれた通信講座です。
公式ページ 日ペンのボールペン習字講座
「3級の攻略ポイント」と照らし合わせながら講座の特徴を説明していきますね。
「5つの読みさすさ」を手に入れよう
手書きの読みやすさを左右する5つの要素
以下の図は、硬筆書写検定3級を受験するしないに関わらず知っておいて欲しい要項なのですが、「この人が書いた字、めちゃくちゃ読みやすいんだけど」と感じるとき、主に5つの要素が深く関わっています。
- 字形が整っている
- ひらがな・漢字同士の字粒が揃っている
- 字間が均等である
- 文字の中心が通っている
- 行頭・行尾が揃っている
これら5つのポイントは、読み手に対する配慮(心配り)をまとめたもので、硬筆書写検定の採点ポイントとして捉えてもよいと思います。
それにしても、上記のポイントすべてに気を配りながら文を書き上げるって相当難しいコトだと思いませんか。
「不器用で悪筆」という不利なステータスを背負ってのスタートを余儀なくされた管理人からすると、いきなりこのレベルに挑戦しても、一体何が出来ていてどこがダメなのか、改善点が分からず混乱してしまうと思うのですよ。
そこで1つ考えがあります。
「字形の整え方」と「整然とした文章の書き方」は分けて考える
読みやすさを左右する5つのポイントをまとめて同時にやろうとするから、注意を払う点が多すぎて意図した通りに書けない。
でしたら、「字形よく書く練習」と「文章を調和よく書く練習」の2つの単元に分割して取り組んでみませんか。いわゆるスモールステップという解決法です。
- まずは、一字ずつ整えて書く練習から始めて、
- その後、きれいな書字をどう並べたら整然とした文章になるのか、字配りのセンスを磨く。
このような道筋をつけておくと、目の前のやるべきことが見えてきます。
ちなみに図中の小難しい用語を説明しておくとですね、
- 間架結構法とは
- 文字一つ一つの形を整えること。造形のコツ。
- 布置章法とは
- 文章全体の調和を図ること。文字の大きさや配置を考える「字配り」とも。
昔から伝わる書法にも「字形を整える理論」と「統一感を醸し出す理論」は別々にあって、一緒くたにして学ぶやり方は意外と難易度が高いのです。
文を書く前にまず「文字」を書く練習から始めよう
このページでは、図中の左側にあたる字形よく書くための練習教材について掘り下げていきます。
硬筆書写検定3級に対応した通信講座
初めてペン習字を習う人に適した通信講座の中でも[硬筆書写検定対応]と明記している講座は、次の2つです。
パイロットペン習字通信講座
筆記具メーカーのパイロットコーポレーションが文化事業の一環として開講している通信講座です。
- この講座のメリット
- 年会費が安い
- 4つの手本から好きな書きぶりを選べる
- デメリット
- 「ひらがな」から練習したい人は[1月],[4月]に入会する必要がある
- スケジュール通りに取り組むと、3級に必要な技量を身につけるまでおよそ2年弱かかる
「好きな手本で学ばないと続くものも続かない」この事実は意外と知られていないような気がします。
実体験として、生理的に受け付けない手本で練習を続けていると心が徐々に荒むことがありました。なので、自分に合った手本を見つけ出し、その書きぶりに惚れる一手間は惜しまない方がいいです(段取り八分に相当)。
その点でパイロットペン習字通信講座は、4種の手本から好きな書きぶりを選べます。
ただ、毎月の課題量が少なく、短期間で3級合格を目指す人は自ら計画を立てて勉強する用意が必要です。
- パイロットペン習字通信講座 受講料
- 初年度 12,960円(添削12回)
- 2年目以降 8,640円(添削12回)
- 添削課題が返却されるまで
- 約10日~2週間
資料請求【無料】 パイロットペン習字通信講座
日ペンのボールペン習字講座
秘伝のタレを継ぎ足すように、現在も教材のバージョンアップが行われているボールペン習字講座です(1970年代から続いているそうで)。
- この講座のメリット
- 約6ヶ月で3級受験に必要な技量が身につく
- 親身な添削で最後までモチベーションを保ちやすい
- デメリット
- 手本が好きになれない人にとっては、やはり苦痛
日ペンの手本は、どちらかというと唐様(中国風)の書風に近く、骨太[安定した]、悠然[落ち着きのある]といった言葉が似合う書きぶりです。
小学生の頃に習った、かきかたの教科書を大人向けに仕立てたようなペン習字入門教材としての特色が濃く、多くの人が親しみを持ちやすい書風となっています。
- 日ペンのボールペン習字講座 受講料
- 29,800円(最長12ヶ月、添削12回)
- 添削課題が返却されるまで
- 約10日
資料請求【無料】 日ペンのボールペン習字講座
より短い期間で3級合格レベルの技量を習得できる点で、ここでは日ペンのボールペン習字講座の教材について、どんな使い方が出来るのか参考までに紹介しておきます。
3級の実技対策ができる「日ペンのボールペン習字講座」
先ほど紹介した「5つの読みさすさ」の中でも中核となる「字形の整え方」を重点的に磨き上げる通信講座です。
最大の特徴は、教室に通えない人でも約6ヶ月間で書き方の基本を学べるカリキュラムにあります。
- 「ひらがな」から一字ずつ練習できるページ構成
- 付属のDVDで先生の手元の動きがよく分かる
- 距離感の近さを感じる親身な添削 など
管理人がこれまで受講した通信講座の中では最も満足度が高く、本気で字が上手くなりたい人の期待に応えてくれる指導体制が整っていました。
公式ページ 日ペンのボールペン習字講座
3級の実技対策に向けてどんな活用ができるのか、私なりの目線でこの講座の特徴を説明していきますね。
書字上達の心得をはっきり伝えている点で信頼が置ける
私がこの教材を初学者にすすめる理由は、「字はすぐに上手くならない」この事実をぼかさず率直に伝えている点にあります。
「2~3ヶ月のあいだ集中的に練習したところで、きれいな字が書けるようにはなりません」と学習ガイドの冒頭で言い切っています。かなり辛辣な表現です。
一方で、書店の美文字練習帳には「たった○日間で字が上手くなる」といった速習性を強調した書籍タイトルが大変多く、少しでも楽に上達できる本を買い求めた経験が私にもありました。
でも結局のところ、すぐに役立つテクニックばかり覚えたとしても詰めの段階で応用が効かず、美文字のコツを知っているだけの頭でっかちな状態で成長が止まってしまうんですよね。
この講座が標準的な学習期間として定めている6ヶ月は、「学習の転移」が発生しやすくなる熟成期間ともいえ、ここで学んだ硬筆の基礎は、字配りのセンスを磨くBプランの練習にもそのまま役立ちます。
安易に期待感を持たせない説明をするのはいいけれど、じゃあどうやって上達を促すのか、それは綿密な学習スケジュールにあります。
25週間後の自分を想像すると、最後までやり切れる
(1日分の"やる事リスト"を消化していくためのスケジュールが既に組まれています)
日々の学習計画をイチから自分で立てるのは、たいへん骨が折れる作業ですが、そこは予め用意された学習スケジュールが役に立ちます。
1日あたりの練習時間の目安はおよそ30分(見開き2ページ分)。1週間のうち2日は調整日として使えるので、中2日を「復習に当てる期間」もしくは「遅れを取り戻す期間」といった選択ができます。
(期限を決めて取り組むから、やる気スイッチが入る)
25週にわたる練習を最後までやり遂げるコツとして期限日から逆算して取り組むやり方があります。
私自身はこれまで締切効果にすがってペン習字を続けてきました、と言ってもいいほど期限付きの集中力に助けられており、
- 「○月○日までに絶対終わらせる!」と先に予定を決めてしまう
- 1年後の受講期限日(最終リミット)を記憶しておく
といった具合に終了予定日をはじめに宣言しておくと、後からじわじわ効いてくるんですよ。結構つかえる心理効果です。
他にも、スケジュール帳やカレンダーに先々の予定として「ボールペン習字講座 完!」といったメモを残しておいたり、115枚のシールを用意して1日分のノルマを達成したら好きなシールを1枚貼ったりする目標管理を行うと、モチベーションを保ちやすいです。
この講座がサポートする5つの基礎固め
硬筆書写検定3級にサブテーマがあるとしたら、"書き方の学び直し"にあるのではないかと考えます。
まずは一字ずつ手本を正確に書写する練習から始め、その中でも、
- ひらがな・カタカナ・数字の書き方
- 楷書の書き方
- かんたんな行書の書き方
これら5種類の書き方を覚えることで「字形の整え方」に関する対策はほぼ完了します。
日ペンのボールペン習字講座には、上記5つの基礎固めが漏れなく出来るのですが、具体的にどんな練習になるのか、少し紹介します。
「ひらがな」からみっちり学べる練習スケジュール
この講座が提案している「1度に習う文字数は少なく」という言葉は、書字上達の的を射た習い方です。
というのも、集中力があり余っているからといって、テキストを一気に進めたところで期待した上達効果は得られないんですよね。
この真理は今の段階で理解できなくても全く問題ないんですけど、きれいな字を書くために必要となる能力は、「観察力」と「再現力」にあると私は考えていまして、
- 理想とする文字の形を鮮明に思い起こすための「目習い」
- イメージした字形を忠実に再現するための「手習い」
これら2つの訓練を通して字は上手くなります。
ですので、1度に習う文字数は少なめに、集中的に書き込んだほうが、習った文字の形を記憶しやすいです(手が覚えるともいいますね)。
日ペンのテキストでは6日間かけてじっくり「ひらがな」の基礎を学べる他に、小テストとして「ひらがな」の添削課題にも挑戦できます。
ひらがなのテキストを見返すときは「ひらがな一覧表」をよく使っています。
補助線を引いたり、索引ページを割り振ったりしておくと、辞書にも似た使い方ができて便利です。
他にも、「ひらがな一覧表」を拡大コピーして目につく場所に貼っておく方法もいいですね。歯磨きをしながらひらがなの形を指でなぞってみる、そんなやり方でもいいんです。細切れの時間を使って練習しても字は上手くなります。
復習用のトレーニングブックは常に開きっぱなしにしておいて、ちょっとした隙間時間(ドラマのCM中など)に今日習ったことを再現できるかチェックしてみる覚え方も効果的です。
どんなやり方でも構いません。とにかく美しい字形を記憶に残そうとする姿勢によって「記憶の定着」が睡眠中に起こります。短期記憶が長期記憶に変わる貴重な時間です。
ですので、よく練習したら睡眠をとること。誰でも実践できる簡単なコトですが、どんな勉強にも使える有効な記憶術です。
実際のペン運びを動画で確認できるから記憶に定着しやすい
(付属するDVD教材の映像の一コマ 「は」の書き方)
「手本をよく見て根気よく何度も書きましょう」この教えの本質って何だと思いますか。
私はですね、先ほどから何度か出ているキーワード「記憶の定着」を促進させるために手を動かし続ける必要があるんだよ、と教えを説いているように感じます。
でもこれって、記憶に残すことが目的でしたら、何も手を動かすことだけが唯一の方法ではないですよね。 「目」で習ってもいいわけです。
その点で、実際のペン運びの様子を目にすることは、記憶の定着によく作用する効果的な練習法になります。
この講座の付録DVDを利用すれば、先生の手の動きを自分の視点に置き換えた疑似体験ができますので、
何度も繰り返し再生して数ミリ先の線の軌跡が予測できるようになると、実際の練習にも効果が表れますよ。
いちど見ただけで仕舞いにするのは勿体ない、貴重な資料映像です。
楷書の基本点画を身につければ、どんな漢字にも応用できる
漢字の項目に入るのは第2巻のテキストからです。
全部で14の項目に関する基本点画を習得すると、様々な漢字に応用できる運筆法が身につきます。
具体的にはどんな習い方になるかというと、
漢数字の「三」には、3種類のよこ画があって、それらの線をどんな漢字に活かせるのか、書き方の基本ルールを知って実践する流れになっています。
「しんにょう」の上手な書き方についても載っていました。こういった整った字形の組み立て方を実践しながら外堀を少しずつ埋めていく内容構成になっています。
本当にちょっとしたコトなんですけど、上記のような細かな気配りを積み重ねた結果なんですよね、字が上手くなるというのは。
この辺は接客業にも通じるところがあって、「ステキな字ですね」と言われる機会があるとしたら、それは読み手に細かな心配りが出来た結果、引き寄せた言葉なのだと思います。
美しい字が書けると一目置かれるというのは、書字で"おもてなし"ができるからなんですね。
テキストの説明を読んで、目で見て覚えて、実際に書いて記憶に残す。この練習パターンを繰り返すことで書字が上達していきます。
「かんたんな行書」が書けると3級合格に大きく近づく
「楷書すらまともに書けないのに、行書を習ったところで消化不良になってしまうのでは…?」これは初学者によくある取り越し苦労だと思っています。
管理人も当初は、行書を"テキストの中盤に出てくる厄介者"と見なしていた一人でした。「行書なんて習う必要性を感じないし、私は楷書を上手く書きたいんだ」と。
でもですね、行書体が書けるようになると、ぶっちゃけ格好いいんですよ。そもそも書ける人が少ないので衆目を集めやすいですし、「用の美」も兼ね備えています。
- 行書を覚える2つのメリット
- その1. 点画を[連続][省略]することで、速書きしても読みやすい字が書ける
- その2. 表現の幅が広いため、楷書より厳格に書かなくても"それらしく"見える
実用性の中に美しさがある点で、日常筆記では行書が書けるようになると何かと便利です。
日ペンのボールペン習字講座では、楷書に近い「かんたんな行書」をパーツごとに覚えていく構成になっていますので、最初の一歩を踏み出しやすいです。
これは「きへん」を三画で表す行書の書き方です。一画分だけ時短できています。
五画構成の「ころもへん」も行書では三画で書きます。省略の美ですね。
「楷書は立つように、行書は歩くように書く」という言葉がありまして、行書は書字のスピードがやや早くなる特徴があります。
(筆脈とは、筆の通り道のこと)
筆脈を実線で表す行書を習うと、楷書の書き方にも見直しが入り、より洗練した運筆ができるようになります。こんな書き方もあるんだなと知っておくだけでも相乗効果があるはずです。
(上から2段目の「やさしい行書」を総当りして書き方のパターンを覚えてしまう)
行書の書き方パターンを完璧なまでに身につける方法として、付属の字典を使い、あ行から順に行書の形を追っていく学習法があります。
なかなかの荒療治ですが、これが出来る人は書字上達の素養を間違いなく持っていることでしょう。
といったように、日ペンのボールペン習字講座では、
- 美しいひらがなの書き方
- どんな漢字にも応用できる楷書の書き方
- 覚えやすく書きやすいかんたんな行書の書き方
を始めとした硬筆の基礎固めが出来る教材が漏れなく揃っています。
必要な環境はすべて整っていますので、あとは「やるか」「やらないか」その判断はあなたにお任せします。
追記 この講座にしかない特徴について
正直なところ、ここまでの内容に関しては、書店に赴いて目利きして教材を揃えれば実現できなくもない学習法なのですが、代替がきかない要素は、受講生の気持ちに寄り添った添削にあると感じています。
モチベーションが上がる意味でも、応援してくださる先生がいることは、最後まで続ける励みになりました。
適切な距離感による添削が続ける励みになる
温度差を感じるコミュニケーションはひたすらに辛いです。
- こちらが熱心に話しかけても聞き手の反応がイマイチなとき
- こちらが傾聴する態度で接しても話し手が投げやりな態度だったとき
そのような会話は長続きしませんし、気まずい雰囲気が流れます。
特に通信添削では、懸命に仕上げた課題作品に対して「よく書けています。今後もこの調子でご精進ください」の一言と赤丸だけで終わってしまう、このようなすれ違いがしばしば起こりがちです。
「頑張って練習したのに、味気ない対応でがっかり……」そんな淡白な添削が続いたら、せっかくのやる気も冷めてしまいますよね。
(起筆の書き方がよく分からず、質問したときの回答)
日ペンの通信添削では、聞き手となる担当講師が情熱的です。こちらの学ぶ意欲を積極的に伝えれば返ってくるものも多く、私の場合、起筆の書き方がよく分からず質問したところ、たいへん丁寧な回答をしていただきました。
本気で字の上達を目指して取り組めば、当然ながらテキストを読み込んでも分からない所が出てくるわけで、質問体制が充実しているかどうかは、通信教育生にとってかなり重要な点だと思っています。
ただしそれも「書けるようになるまで書きましょう。根気と努力が必要です」といった精神論で諭されては根本的な解決には至りません。理屈を交えた分かりやすい助言をしていただける点で日ペン先生の見識の高さがうかがえました。
あなたの指導を担当される先生は、日本ペン習字研究会の師範の先生方です。
ペン習字歴、指導歴10年以上のベテランの方々ですから、安心しておまかせください。
- 日ペンのボールペン習字講座 「学習のすす方」p6
日ペンに所属している2万人近い会員の中でも、トップクラスの先生が添削講師を受け持っているのではないかと予想します。
もちろん、肝心の添削課題も丁寧に見ていただきました。基本は褒めつつ、書けていない字についてはしっかりチェックが入っています。
字形の整え方に特化したノウハウを持っているのが日ペンという団体の特徴でもあるので、初心者に限らず、基礎固めをしたい人にとっても都合がいい学び場です。
枠からはみ出す勢いのメッセージを残していただけると、応援してくださっていることがそれとなく伝わってきて嬉しかったですし、美しい肉筆を生で拝見できたことも練習する意欲に繋がりました。