2級 第3問の概要
硬筆書写検定2級の第3問は、60字程度の漢字かな交じり文をタテ書きで書く問題です。
私自身、ヨコ書きよりもタテ書きの方がずっと書きやすく感じるのですが、皆さんはどうでしょうか。
後に控えている「掲示書き」や「ハガキの裏書き」は、下準備も含めて時間を取られる問題です。行書と連綿を使ってリズムよく書ける第3問は、あまり手間取らずに切り抜けたいところです。
3級との違いは?
- 連綿が使用可能になる
- “漢字は行書、平仮名は連綿で書いてもよい”という条件
問題文の注釈にある「平仮名は連綿で書いてもよろしい」という文言は、「連綿で書けるところを見せてほしい」とも受け取れ、ひらがなを続け字にするか判断に迷うところですが、検定協会が発行している手びきによると次のような記述がありました。
二級は専門的クラスですから、仮名を連綿で書いてもよいとしているのです。連綿で書いていなくてもしっかり書いてあればもちろん合格します。
しかし、連綿の形で美しく発達した仮名ですから、連綿で書いてもよいとあれば、うまく書けるならば、やはり連綿で書く方が有利でしょう。(p70)
- 『硬筆書写技能検定の手びきと問題集』平成27年度版
うまく書けるなら、連綿で書いた方が有利とのことです。ただ、自分の力量に見合った書きぶりに徹することの方が至って大事ですので、そこは見誤らないようにしてください。
実際の合格答案例
(わかくさ通信 平成26年11月号より)
これは、2級第3問の合格答案例です。
行書に心得がある書き方で、問題文と同様に段落の一字下げに注意を払っている点が伺えます。
答案する際の留意点 おさらい
第3問タテ書きを答案する際に心得ておきたいポイントは、硬筆書写検定3級編にてまとめました。
おさらいすると、
- 1行あたりの文字数は、13~15文字程度。
- 天地の余白は5ミリ程度に設定し、行頭・行末を揃える。
- 字粒の比率は、漢字 > ひらがな > カタカナ
- 適切な字間を心がける。
ここではさらに、枝葉となるポイントについて3つほど紹介します。
答案の完成度を高める3つのコツ
その1 行頭・行末を揃えるための微調整
答案する際は、天地の余白を5ミリほど空け、行頭・行末を揃えることは先ほど触れました。
この行頭行尾を揃えるにあたって、文字の重心と錯視の関係を踏まえておくと微調整がうまくいきます。
漢字の「一」や、ひらがな「て」のようなヨコ線から始まる文字は、重心が上に寄っています。
このような上側のスペースに圧迫感を与える文字は、書き始めの位置をわずかに下げると行頭が揃っているように見えます。
こちらは失敗例です。書き始めの位置を完璧に揃えてしまうと、上側に重心を持つ文字が浮いているように見えます。
同様に、下側に重心を持つ「土」や「生」のようなヨコ線で終わる文字は沈んで見えますので、書き終わりをわずかに上げることで行末が揃っているように見えます。
目の錯覚を利用して調和させるのもひとつの技術です。
その2 文字の流れを意識するには
3級編の解説では、文字を図形として捉え、字間を適切に保つ方法を紹介しました。ここでは実際に「四万十川」という漢字を用いて検証してみます。
左側は、すべての字間を等間隔にしました。右側は文字の重心を踏まえつつ字間を調整しました。どちらが自然に見えるでしょうか。
ここでも文字の重心から派生する錯視が影響しています。タテ書きにおいて文字と文字の間に長いヨコ線が連続するときは、お互いの文字がスペースを主張し合っていますので、書き手が調整するように努めてください。
さらに2級ともなると、文字の流れを汲んだタテ書きが求められます。
連綿としない場合であっても、文字から文字へと繋がる見えない線(筆脈)を意識して書くと、適切な字間を保ちやすいです。
特に試験中は緊張して視界が狭まり、字間が詰まりやすい傾向にあります。この懸念は、筆脈を念頭に置いた書きぶりによって解消できます。
その3 句読点は分かりやすくはっきりと書く
「、」や「。」といった句読点は、一画一文字のつもりではっきり書き表すことが大切です。
この句読点は、最大でひらがな一字分のスペースを保有しており、行末を揃える上で帳尻を合わせやすいボーナスアイテムでもあります。
勢いにまかせて句読点を打ってしまい、次の文字を書いてしまうと調整が効かなくなりますので、補給ポイントに見立てた句読点で一度立ち止まり、行内にあと何文字入りそうか思案すると行末を揃えやすくなります。
さいごに 覚えやすい連綿について
流れが自然で書きやすい連綿として、「です」「ます」「ました」があります。日常筆記でよく使う言葉でもあり、これらの連綿を書けるようになっておくと何かと便利です。
2級のタテ書きでは連綿が使用できます。このような続け字から書き慣れて、手持ちの連綿パターンを少しずつ増やしてみてください。