硬筆書写検定3級 タテ書きのポイント

3級 タテ書き(漢字かな交じり文)の概要とねらい

硬筆書写検定3級の第3問は、タテ書きで漢字かな交じり文を書く問題です。

3級 第3問 問題文

タテ書きは、日本語本来の表記法であり、読む人に改まった印象を与えます。

たとえば、

  • 出産祝いのお礼状
  • 取引先への挨拶状
  • 入院見舞いの手紙など

このような、相手に敬意を払う文書ではタテ書きを用いる場合が多く、書き手の心情を伝える際に有効です。

さらに、線に柔らかみがある行書体とすることで温和な書きぶりとなり、手書きの魅力がより引き立ちます。

3級第3問のタテ書き対策を通して、想いが伝わる文書が書けるようになります。

実際の合格例

3級 第3問 合格答案例

(わかくさ通信 平成27年3月号より)

これは、3級第3問の合格答案例です。

一部、楷書とおぼしき漢字を含んでいますが、

  • 字粒の大小をわきまえ、
  • 字間を均等に保ちつつ、
  • 文字の中心が通っている。

行頭・行尾も揃っており、文章としてのまとめ方が立派です。

3級では、それほど崩さない易しい行書が書ければ問題ないようです。

答案条件が“漢字を行書、仮名を連綿としない”となっていますので、ご注意ください。

答案する際の留意点

第3問を答案する際に心得ておきたいポイントをいくつかまとめておきます。

その1 行頭・行末を揃える

書き始める前の準備として、まず天地の余白を決めます。

天地の余白は約5ミリ

上側の余白は約5ミリ、下側の余白は6ミリほど空けると、枠に対して文章がほどよく収まります。

場合によっては、書き出し・書き終わりの位置に補助線を薄く引く方法もありますが、この補助線は試験時間内に必ず消すようにしてください。

文章を塊として見たとき

行頭・行末の不揃いは、文章の読みやすさを左右します。不安定なレイアウトによって視認性は下がり、読む人に落ち着きのない印象を与えますので、配字に注意しながら、行頭・行末はしっかり揃えましょう。

その2 各行の字数の目安

1行あたりの字数は13~15字程度

第3問の答案用紙は、1行の幅が18ミリです。この罫幅に対し、60~70%の字粒で書き進めると、1行あたりの字数は13~15字程度が適しています。

天地の余白は既に決めてありますので、各行の目安となる文字数を大きく外してしまう際は次のような原因が考えられます。

目安となる文字数を超えてしまう場合
字粒が小さすぎる。
字間が狭すぎる。
目安となる文字数に達しない場合
字粒が大きすぎる。
字間の空き過ぎ。

罫幅に対する字粒の感覚は、書き込んで体で覚えるしかありません。

その3 字粒が揃って見えるように

漢字の大きさを基準として、ひらがなはやや小さめに。これは読みやすい文章の鉄則です。

基本的に漢字同士、ひらがな同士で字粒を揃えるのが好ましいですが、文字によっては存在感が強まって見える字があります。

画数が少ない漢字は見た目が肥大化しやすく、「山」や「日」などの文字は控えめに書くと収まりが良くなります。

ひらがなの中にも控えめに書く字があります。「こ・と・も・ら・よ・め・る」が該当し、文中の中では最小の字粒として扱うのが適切です。

その4 適切な字間を保つには

ペン習字上達のコツのひとつに「文字を図形として捉える方法」があります。丸、三角形、台形など、字の外形をパターン化して覚えると字形の特徴が掴みやすく、この考え方は適切な字間を保つ際にも役立ちます。

文字の外形によって適切な字間は変わる

上の画像は、いくつかの文字を図形に見立てて並べたものです。

左は文字同士の間隔をすべて同じにしました。字間が等間隔であるにも関わらず、三角形と長方形の隙間には長い横線が連続したため、字間が詰まっているように見えます。

そこで右の並べ方は、字間が均等に見えるように調整しました。タテ書きの場合、「文字の重心が上にくるのか、下にくるのか」を考えながら書くと適度な字間を取りやすいです。

試験中は緊張状態が続き、視野が狭くなりがちです。それに釣られて字間も狭まりやすい傾向がありますので、文字と文字の間は意識してゆとりを待たせましょう。

ポイントをまとめると

  • はじめに天地の余白(上側5ミリ、下側6ミリ)を設定する。
  • 罫幅に対し60~70%の字粒を心がけ、ひらがなはやや小さめに。
  • 1行の文字数は13~15字が目安。
  • 字間は狭くなりがちなので、意識してゆとりを持たせる。

加えて、第2問のポイントで紹介した「効率よく書き上げるための下準備」を用いると、中心がよく通り、完成度が高まります。

第3問から続く実技問題は、読みやすい文章レイアウトを学べる要素が多く、単体文字の練習で終始しがちな人にとっては学習の幅が広がります。