「ペン習字の先生が字形のどこに着目して書いているのか」が分かるハウツー本です。
私が初めて手にしたペン習字教本でもあり、今でもたまに見返しては「ああ、そういえばこんな書き方するよね」などと現在の「目習いレベル」を確かめるのに利用しています。
この本を購入したきっかけ
私がこの本を手にしたのは、ユーキャンのボールペン字講座を受講して間もない頃でした。まだペン習字を始めたばかりのときです。
届いた講座テキストの言う通りに従って黙々と進めていたものの、上手くなっている実感がイマイチつかめず、「学習の方法になにか問題があるのかな? そうは言っても、どのように改善していけば……」と、まさに何が分からないのかが分からない状態でした。
そんな中、何の気なしに立ち寄った書店の片隅にペン習字教本のコーナーがあることに気づき、この本を見つけました。
陳列している全ての本をチェックして気付いたのは、ペン習字関連の書籍は大きく3つのカテゴリに分類できること。それは、
- 書き込み式の練習帳タイプ。
- きれいな字に共通するルールをまとめた理論タイプ。
- 大先生が文字の手本を1冊に凝縮した字典タイプ。
これまで「手本をどこまで詳しく分析するか」といった視点から練習したことがなく、当時の私にとってこの理論タイプの本は物珍しく感じました。
本の概要
本書は、ペン習字特有の美しい字形に共通するルールをまとめたもので、学習初期によく遭遇する「手本の見方が分からない悩み」をサポートしてくれる本です。
- 第1章 まずはひらがな・カタカナから
- 田中先生の書くひらがなとカタカナ。
- 第2章 これだけはおさえて!美文字の基本
- 字の基本ルール10個。
- 第3章 点と線が字の決め手
- 美しく見せる点と線の書き方について。
- 第4章 美文字のためのレッスン16
- 字形の基本、字を安定させる線の長さや方向、偏とつくりの位置関係について。
- 第5章「もっときれい」をめざす17のレッスン
- 「はらい」を決めるテクニック、字をうまく見せるちょっとしたコツ、同じ形が並ぶ字の整え方。
- 第6章 このコツを覚えて応用自在!
- 「くさかんむり」や「しんにょう」部分の書き方のコツ15個。
- 第7章 行書だってむずかしくない!
- 行書の基本とその書き方について。
- 第8章 すぐに使える!お役立ち実例集
- 名前、数字、袋表書き、手紙の書き方のコツ。
著者の紹介
著者は、田中 鳴舟(めいしゅう)先生。ペン習字の専門誌『ペンの光』を発行している団体「日本ペン習字研究会」の会長でもあります。
手本は第一級をめざして丹念に書き上げました。
今まで、字が上手に書けないと悩みつづけた方にはもちろん、書を専門とする方々にも、必ずや役に立つことと信じています。ことに、どういう点に気をつけ、どんな風に考えればきれいな字になるのかといったことに、日頃腐心なさっている方には、うってつけのものといえます。
- 『いつの間にか字がうまくなる本』 p3 PHP研究所(2002年)
「よくない例」があるから分かりやすい
字形を整形するルールに沿った「よい例」と「よくない例」が比較できます。
これらのよくない例が字形を整えるルールを印象づける引き立て役になっています。
立ち位置は永遠の副教材
ペン習字を習っている人の文字にはどこか特徴があり、それは字形を整えるいくつものルールを当てはめているから、ともいえます。
本書は、ペン習字の経験者が書く美しい字形の共通項をやや強引に図解化してあるせいか、これからペン習字を始める人が読んでも十分な理解は得られないかもしれません。例えるなら、詰め将棋ハンドブックのようなものでしょうか。
技量が増すにつれて読み応えを感じる内容であり、書き込み式の練習帳と併用しながら何度も読み返すうちに新しい気付きや改善点が見つかります。
「目習いとは何か」が分かる本
ペン習字の初学者によくある悩みに「手本の見方が分からない」との声をよく聞きます。
この悩みを解決していく最初のステップは、文字の特徴を詳細に捉える目習いの向上に懸かっています。「目は肥えているけれど、実際の技能は未熟である」眼高手低の四字熟語を体現する必要があるのですね。
この状態を作り出すには、多くの人が陥りがちな「感覚のみに頼って書く練習法」を改めないといけません。
成人ともなれば考える力が子供より備わっていますから、見よう見まねの数稽古よりもっと効率的に学習できます。手本の特徴を捉える目習いの力を高めるためにも、本書が示す「字形の整形ルール」にいちど触れてみてください。
コメント