書道とペン習字の違いはどこにある?

「きれいな字を書きたい」漠然とそう思ったとき、どんな場面でその能力を発揮したいのか、具体的な説明ができる人ほど、踏み出す次の一歩にためらいがありません。

近くの書道教室に通った方がいいのか、はたまた、書店の「美文字練習帳」を手にすれば十分なのか、「書道」と「ペン習字」どちらを選ぶか決めかねている人は、まず2つの違いを知ることがスタート地点になります。

このページ 3行まとめ
ジャンル分けするなら、書道は「芸術科」 ペン習字は「国語科」
競書誌を見比べるとその傾向がよく分かるね。
目的に応じた習い事を選ぶのが吉です。

書道とペン習字の大きな違い

ペン習字は、書道カテゴリの中のひとつ、といった印象を持つ人は多いかもしれません。

具体的な違いはどこにあるのか表にまとめてみました。

書道 ペン習字
学習の目的 文字による自己表現 正しく整えて書くこと
学習の方向性 文字の肉付け(筆法)を学ぶ 文字の骨格(字体)を学ぶ
学校教育での区分 芸術科
文字に芸術性を持たせて書く教科
国語科
文字を正しく書く教科
想定する活用場面 主に作品作り 日常での筆記
穂先の素材 弾力性に富んだ動物毛 鉛筆・ボールペン

手本に倣う練習法はお互いに共通しているものの、その先に見据える目的地が異なるため、比較すると多くの相違点が見つかります。

もう少し分かりやすく対比してみますと、

書道
古典の臨書によって筆法の引き出しを増やし、書き上げる作品には書者の個性美が宿る(手本とそっくりな書は面白みがない)。
ペン習字
相手に伝わる文字の読みやすさを重視。実用性の中に美しさがある「用の美」を目指す。

つまりは、追求する文字の美が異なるのですね。

さらに Wikipedia ではそれぞれの習い事を次のように説明しています。

書道(しょどう)とは、書くことで文字の美を表そうとする東洋の造形芸術である。

書道とは、文字の美的表現法を規格あるしつけのもとに学習しながら、実用として生活を美化し、また趣味として心を豊かにし、個性美を表現していくことである。

引用元:書道 – Wikipedia

ペン習字(ペンしゅうじ)とは、硬筆書写の一種。

毛筆による習字・書道で求められる芸術性を排し、可読性が高く実用的な字が書けるようにすることを目的としている。日常生活で使われる筆記具を用いて日常生活で書かれる文章(自分の名前、住所、手紙文など)を練習する事が特徴である。

文字単体を美しく書くことよりも、書きあがった文章などの全体としてバランスよく、読みやすく、綺麗に見えることが重要視される。

引用元:ペン習字 – Wikipedia

様々な表現技法を体得し個性美を探求する「書道」に対して、文字としての読みやすさを何より優先する「ペン習字」。両者にはこのような違いがあります。

ペン習字も学習の幅が広がるにつれて、作品作りや展覧会への出品といった書道の傾向を帯びてきますが、もはやその段階となれば、手本を真似て書く「習字」から卒業していますから、ペン習字というより「ペン書道」と呼ぶのが適切です。

競書誌から見る学習の方向性

では実際に、書道・ペン習字の競書誌では、それぞれどのような課題を設けているのでしょうか。少し見比べてみることにします。

『ペンの光』規定部の課題

(画像クリックで拡大)

私が購読しているペン習字専門の競書誌では、実生活でもよく使うボールペンで書かれた手本が多々あります。出品する作品は、忠実に手本を模倣するほど評価が高くなるようで、形臨[1]の傾向が強いです。

重要視されるのは、

  • 字粒や字幅が適切であるか。
  • 行の中心が通っているか。
  • 線質に乱れがないか。

といった正しく整えて書く実用における美しさが求められています。

では、書道の競書誌はどうでしょうか。

『書の光』規定部の課題

(画像クリックで拡大)

書道の一般的な規定課題といえば、古典の臨書です。

書道の正当な学習法でもあり、過去の名筆に倣い、それらの書風を自身の作品づくりに応用して力を身につけていく狙いがあります。

課題の注釈には 手本にとらわれず創意工夫、古典の裏付けのある書風を出書してくださいとあり、小学生の頃に習った毛筆習字とは学習の方向性が変わっています。

きれいな字に求める役割を明確にすると道が見える

書道とペン習字の違いを1文にまとめると、「書道は自分の顔をした書を追求し、ペン習字は日常筆記における読みやすさを追求する習い事」といったところでしょうか。

一時期、通信教育のペン習字と並行して書道教室へ通ったことがありました。双方の組み合わせによって上達の相乗効果が生まれればと考えていましたが、先述のとおり、ペン習字と書道では求める美的感覚が異なります。

書道的な筆使いや古典の臨書は、それはそれで大変勉強になりました。

ただ、私がやりたかったのは「賞状書き」や「熨斗の表書き」といった実務書道であって、展覧会へ出品するような個性を表現する作品づくりにはあまり興味を持てず、「書道はペン習字の延長線上にある習い事ではないようだ」そう気付いたのは教室に通い始めて1年ほど経った頃でした。

どちらの習い事も長くさえ続けていれば、創作・実用どちらの書字も楽しめることでしょう。とはいえ、私たちの時間は有限です。

「私もあのような美しい字が書けたらなぁ」ふと思ったその気持ちは、書道とペン習字、果たしてどちらの習い事が叶えてくれるのか。その点を明確にしておくだけでも、学習の方向性が自ずと定まってきます。

  1. 形臨とは、字形の模倣に重点を置いて書くことで用筆法の習得を図る練習法。 []
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