ペン習字を習っているのに上手くならない理由【2つの壁】

ペン習字を習う上で立ちはだかる壁は2つあり、これらの関門を知ることはペン習字上達の仕組みを知ることにも繋がります。

このページでは管理人のしくじりを踏まえながら、2つの壁を乗り越える際の要所についてざっくり説明していきます。

ペン習字には2つの壁がある

なぜか上手く書けない悩みは、ペン習字にはよくある悩み事なのですが、中でも初心者の人が感じる書けないもどかしさは、この習い事から徐々にフェードアウトしていく挫折感にも繋がり、悩みの深刻度はより高いです。

このような学習初期によくある「出来ない理由」は、単純に「やり方を知らなかったから」といった事例が意外と多く、知ってしまえば何の事はない、活路を見出だせるケースがままあります。

管理人が考えるペン習字上達の飛躍ポイントは2つありまして、

  1. まずは、書写のやり方を習得すること
  2. 習熟した書写技術を自運の力に転化すること

身につけた書きぶりを暮らしの中に活かすには、この2つのポイントをクリアする必要があります。

第一の壁は「書写の壁」

ペン習字は硬筆に適した美しい書きぶりが身につく習い事です。

手本の型に倣って真似ぶ(学ぶ)トレーニングを通して正しく整った文字が書けるようになります。

ところで、この手本を真似る際の正確さってどの程度の精度が求められていると思いますか?

市販のペン字練習帳には、練習に入る前のコツとして次のような説明が記載されています。

お手本そっくりに書きます

お手本をしっかり見て、字の特徴を理解したら、次はそっくりにまねて書いてみます。

書き順、「はね」「はらい」「とめ」、丸みを持たせる部分など、ひとつひとつ気を配ります。

こうして、お手本のポイントを意識しながらていねいに書くことで、上達しやすくなります。

『和田康子のボールペン字とことん練習帳』p9 和田 康子(2008)

ここでいう「お手本そっくりに書く」とは、「寸分違わず」とか「1mm単位の誤差で」といった精度を指しているんですね。

こういった書写の尺度を知らないがために、自分の中にある図形感覚でもって書いてしまう人は結構多いです。

その結果、出来る人はどんどん上達していく一方で、出来ない人はいくら書いても前に進めない成長の分断が少なからず発生します。

ですので、自信がない人は、誰が書いても手本と同じように書ける方眼罫を用いた書写練習から始めてみてください。やり方はそれほど難しくありません。

誰でも上手に書ける字の練習方法

(書いては消しての繰り返しで字形のバランスを整えていく)

まずは、コピーした手本にタテ・ヨコ4本ずつの補助線を入れ、均等に16分割した状態を作ります。

次に、方眼マスのノートを用意し、鉛筆で正確に書写します。この段階では、二度書き、三度書き、消しゴムを使っても構いませんので、忠実に手本の書きぶりを再現し、「定規となる目」を養います。

手本を書写する際のポイントは、線の通り道に意味合いを持たせることです。

それは例えば、

  • 線の書き始め・書き終わりの位置
  • 線同士が交わる位置
  • 線の方向が変わる位置

このような位置関係を座標として捉えることで、一画ごとの線の流れ・長さを把握しやすくなります。

手本の特徴を捉えたら、ここで初めて数を書く練習に移ります。図形感覚に自信がない人でも「16分割した手本」と「方眼ノート」を用いるとなぜか書ける感覚を味わえます。

ある程度書けるようなったら、今度は補助線の数を減らし、4分割(十字リーダー)による手本を使って同様の手順を繰り返します。

なぜここまで細かい書写にこだわるのかというと、この練習には、字の上達に必要な栄養がもれなく入っているからからなんですね。観察する「目」と再現する「手」の限界に挑戦することで、美文字のバランス感覚が分かるようになります。

書写練習の良いところ
「目習い」と「手習い」を同時にできる。一石二鳥で効率的。
思い込みによる線の狂いやズレを自動的に感知する能力が向上。
昨日の自分より下手にはならない程度の効果はある。

手癖を自覚して修正する繰り返しによってペン習字は着実に上達していきますので、すべての基本は書写練習にあるといえます。

【しくじり その1】ノルマを達成すれば成果が得られると思っていた

管理人がペン習字を始めばかりの頃は、テキストの練習マスにどんどん書き込んでいけば字は上手くなるものとばかり思っていました。

(練習帳マスを埋めるだけでは上達が厳しい書写技術の目安)

ここでの失敗は、1つの文字に時間をかけて学ぶ姿勢を怠ったことです。

ただでさえ書写技術の素地がないにも関わらず、とりあえずテキストを進めておけば「何やら見えない力が働いてそのうち効果が表れるのでは」と思っていた節がありました。

そんな都合の良い現象が起こるわけもなく、間違いに気付いてからは、別途に漢字練習帳を揃え、1つの文字に集中して書く方法に切り替えました。

ただ、この当時は書き込む「量」でしか先を見通せなかったというのが実情で、上記の首尾よく書写する練習法を予め知っていたら、思い通りに書けない苛立ちに振り回されることもなかったのになと思います。

第ニの壁は「自運の壁」

「通信講座の課題を全て提出したのに、手本がないと普段の字に戻ってしまう」といったケースは多くの場合、自運の壁でつまずいている可能性が高いです。

手本を見ずに自分の力で書く練習方法を「自運」といいます。

ペン習字の自運は、書道における「背臨」にも似た練習方法で、手本を伏せて記憶を頼りに書写を行います。

ここで「書写」と「自運」の違いについておさらいしておくと、

書写とは
手本をよく見て真似ること。
「見る力」×「表す力」が求められる。
自運とは
手本を伏せて真似ること。
「イメージする力」×「表す力」が求められる。

自運の難しさは、ひとえに「イメージする力」にあると思います。

本来、字形をイメージする力は、書写の繰り返しによって身につくはずなのですが、人によっては手本を手元に置かないと練習した字が書けない症状が起こります。

【しくじり その2】書写力が上がれば普段の字も上手くなると思っていた

管理人も手本がないと途端に下手な字になる練習生の1人でした。

当時は、悪筆を改善するためには「一にも二にも書写練習しかない」と信じ込み、この勘違いに拍車をかけたのは「競書誌の昇級」にあったかもしれません。

競書誌では、日頃の練習成果が「級位の認定」といった成績として反映されます。褒められることなど一切なかった自分の字をプロの先生が評価してくださる喜びは、ペン習字を続ける大きな励みになりました。

ところが、普段の字はそれほどでもないのに級位だけは着々と上がっていきます。相変わらず自筆が下手くそなのは「書写の練習量が足りないからだ」と手本への依存度がますます強まり、しまいには「拙い字を書くと悪い影響があるから普段の手書きはなるべく控えよう」と本末転倒な考えにまで及んでしまいました。さすがにこじらせすぎです。

今になって考えてみれば当然のことなのですが、手本の見写しは、あくまでインプット(入力)にしか過ぎないんですよね。手本なしでアウトプット(出力)する機会があって初めて本物の力になる仕組みを当時はいまいち理解できませんでした。

つまるところ、書写の練習時には次の手順を踏む必要があったのです。

  1. (手本を)見て、
  2. (手本を見ながら)書き写し、
  3. (書いた字を手本と)見比べて、
  4. 手本なしでもう一度書く。

最後の「手本なしでもう一度書く」たったこの一手間を取り入れるだけで、自運の力は徐々に高まります。

適した自運の訓練法は人それぞれ

とはいえ、「手本を伏せて記憶を頼りに書いてください」と言われて一朝一夕で出来るようになったら、どんなに良いことかと思います。

自運のコツは、その人の記憶感覚に拠る所が大きく、ペン習字の教本にも詳しい説明は載っていません。テキストの行間を読む限りでは「練習を怠らなければそのうち書けるようになります」という教えが根底にあるようで、融通が利かない難しさを感じます。出来ない人はここで置いていかれるんだなと。

言葉による説明では3割も伝わらないかもしれませんが、一応対策はあります。

先ほど紹介した手本を書写したときの感触をそのまま自運に持ち越す方法であれば、目を閉じて筆順を辿るように字形をイメージする記憶法もあったりと、自運の練習方法は、その人の精神世界が強く影響します。

それだけに、手を動かして覚える方法が最善策とは限らず、青い空を背景にして習った手本を思い浮かべてみるちょっとした心がけによっても自運の力を伸ばせます。

いわゆるイメージトレーニングですね。長くなりますので、このページでは詳しく触れませんが、自運のコツはイメージ力にあると管理人は考えています。

ペン習字は 0 → 1 にレベルアップするまでが難しい

ペン習字における指導の現状は、

  • 「何百回と繰り返し書く」
  • 「手が覚えるまで書く」
  • 「毎日少しずつでもいいから書く」

といった数稽古を奨励しているのが一般的で、陸上競技やサッカー、ピアノ奏法といった分野と比べてコーチングのほとんど技術が普及していません。

手本を書く様子を間近で見てもらったり、丁寧に添削したりする高度な技術を駆使した指導法は充実しているものの、「なぜ自分は出来ないのか」「どうしたら出来るようになるのか」といった初歩的な悩みに対しては、「やはり毎日書くしかない」が最適解となりやすく、出来る人とそうでない人を隔てる溝は深いです。

図解 ペン習字が上達する人は自分に合った練習法を知っている

書き込む量で成長を促す上達法は、もともと出来る人にとっては非常に都合が良い一方で、出来ない側の人はドツボにはまったまま抜け出せない可能性が高く、書字上達の秘訣は、自分に合った適切な練習方法を知ることにあると考えます。

ですので、書き込み式練習帳のページを全て埋めたからといって必ずしも字が上手くなるわけではなく、2冊目、3冊目と進んでも効果を感じない人は、これまでのやり方を見直す一手間が発生します。

上達の度合いが練習量に比例するのは、正しいやり方を知ってからの話なのですね。

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