2013年10月の発売から9か月経過した時点で、販売数は50万本を突破。
「この勢いでいけば100万本も夢ではないと思います」
- 引用元:Yhaoo!ニュース – 日本初の本格的な子ども向け万年筆 50万本突破の大ヒット)
パイロット社の営業・企画部の方も予想していなかったほど破竹の勢いで売上数を伸ばしている子供向け万年筆「カクノ」。
流行情報誌『日経トレンディ』が発表する「2014年ヒット商品ベスト30」では、若い女性を中心に新しいユーザー層を掘り起こしたパイロット万年筆「カクノ」が25位にランクインしました。
子供向けの万年筆がなぜここまで支持されているのか、「カクノ」がグッドデザイン賞を受賞したページを参考にしながらその魅力をまとめてみたいと思います。
参考リンク)2014 グッドデザイン賞 – 万年筆 [kakuno(カクノ)]
「楽しく」 使えるデザイン
「カクノ」のパッケージは、万年筆とひと目で分かるように、キャップを外し、ペン先を見せたブリスターパックです。
両端をドット柄で縁取ったかわいらしいパッケージデザインで、カラフルなドット色は「カクノ」のカラーバリエーションを意味しています。
パッケージのシールを剥がすと、かわいいイラストがお出迎え。
ペン先がウィンクしている
ペン先に刻印された笑顔マークは他の万年筆にはない「カクノ」だけの特徴です。
豊富なカラバリ
新バージョンの「カクノ」ではパステルカラーが4色追加されました。インクの色に合わせて使い分けしたくなるカラーバリエーションです。
滑らかにペン先が走る書き味
「カクノ」の細字(F)は、ゲルインクボールペン0.5ミリよりやや細い字幅です。太字(M)になるとより滑らかに書ける感覚を味わえます。
万年筆の書き味に魅了される理由
万年筆は、ペン先を紙に置くだけで自然とインクが流れる特性があります。
筆圧をかけないと文字が薄くなりがちな油性ボールペンと違って、万年筆はペンの重みだけで線が書けるのです。
万年筆を使うとペンを持つ手が不思議と緩みます。これは長時間書いても疲れない持ち方です。
「正しく」 書ける工夫
「カクノ」のパッケージには、万年筆本体の他に
- 万年筆の使い方説明書
- カートリッジインキ(黒)
を同梱しています。
スマホを使えば万年筆の使い方を簡単に調べられますが、これは子供向けの万年筆です。
説明書では、万年筆の使い方をいちから順に丁寧に教えてくれます。
疲れにくい、持ちやすい多角形グリップ
この持ち方矯正器具は、鉛筆の軸を三角軸に変換するグリップです。
グリップを装着すると三角軸になります。
平らな面を設けることで指と密着する表面積が増え、より疲れにくい持ち方ができます。
「カクノ」にも同じ工夫がされています。
「カクノ」は子供の手に馴染みやすいよう、グリップがなだらかな三角形になっています。
グリップに安定感があると、ペンを強く握りしめなくてもブレずに文字が書けます。
えがおのマークが上になるように
鉛筆やシャープペンと違い、ペン先が割れている万年筆は、正しい角度で紙に当てないとインクが出ません。
「笑顔のマークがいつも上を向くように書くんだよ」と教えてあげれば、初めて使う子でも万年筆で書くコツをつかみやすい作りになっています。
転がりにくい六角軸
軸が円柱状となった万年筆が多い中、「カクノ」は軸もキャップも六角形状となっています。
転がりにくく、持ちやすい六角軸。
キャップの先端と軸尾には、誤飲を考慮した小さな穴がいくつかあいています。
キャップに付いた小さな突起は机からの落下を阻止します。
「気軽に」 試せる価格帯
1,000円の低価格万年筆に、3,000円クラスのペン先を採用
「カクノ」のペン先には、細字万年筆として定評がある「プレラ」や「コクーン」と同じペン先を採用しています。
その代わり、ペン先以外の部品はすべて樹脂製となっていますが、丸みを帯びたやさしい感触とパステルカラーの組み合わせによってチープさは感じにくいです。
パイロット社製で売れ筋の万年筆は、「カスタム74」をはじめとした1万円クラスの商品でした。
「カクノ」の登場によって、「万年筆に関心はあるけど、値段で敬遠していた」若年層を中心に裾野が広がっています。
「カクノ」が人気な理由を考える
「万年筆を初めて使う人のために」をコンセプトとした類似商品として、セーラー万年筆「マイファースト」があります。
そこはかとなく昭和を感じるあのプラスチックパッケージをプレゼントされても、今の子はあまりときめかないでしょうし、ネーミングと外観が釣り合っていない名前負けしている商品であるのは否めません。
私が想像する「マイファースト」のギフトシーンは「中学校を卒業した孫へ贈る、おじいちゃんからのプレゼント」が真っ先に思い浮かびます。
入学・卒業・入社での贈答品がこれまでの万年筆市場を支えてきたにしても、もはや需要が見込める鉄板セオリーではなくなりました。「マイファースト」は、「カクノ」と立ち位置が被っているがために、贈り物としての需要を根こそぎ奪われている印象があります。
一方、「カクノ」は子供向けの万年筆であると同時に、初心者向けの万年筆でもありますから、
- 子供へのプレゼントだけでなく、
- 万年筆初心者の大人が買っても良し。
- 友人へ万年筆を布教するも良し。
- 普段使いとしても優秀。
「カクノ」の登場によって万年筆をプレゼントする需要が伸びたのは間違いないと思います。
「カクノ」のかわいいパッケージは、そのままでもギフト文具として通用しますし、自分へのご褒美に購入してもワクワク感を十分に味わえます。
「カクノ」が新しいユーザー層を掘り起こした理由のひとつは、「万年筆を初めて使う小学生」を想定した子供目線での使いやすさが、大人向けの入門用万年筆にも当てはまっていることです。
デザイン、書き味、価格設定など、今まで見えていなかった奥のニーズと上手く噛み合ったせいか、パイロット社製の万年筆「カクノ」は発売からわずか1年で65万本を売り上げています1。
ちなみに、「カクノ」と同価格帯(定価 1,000円)の万年筆は、
- セーラー万年筆「クリアーキャンディ」
- 中細字(FM)
- 「カクノ」よりさらにポップな外観。
- セーラー万年筆「ハイエース ネオ」
- 細字(F)
- 滑らかな書き味の細字として定評がある万年筆。
- プラチナ万年筆「プレジール」
- 細字(F)・中字(M)
- 同メーカーの廉価商品「プレピー(定価200円)」と同タイプのペン先なので、お得感に欠けるかも。
1,000円クラスの万年筆で太字(M)が欲しい人は「カクノ」か「プレジール」が選択肢に入ります。
- ヒルナンデス「2014年の売り切れ商品大集合SP」にて(2014年12月23日放送) [↩]
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