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これから始める「つけペン」入門 「インク」編

つけペンの使いづらさを補うための入門マニュアル、第3回目は「インク」の特性についてまとめます。

第1回
「ペン先」について
第2回
「ペン軸」について
第3回
「インク」について
第4回
「使い方のコツ」について

まえがき

私がこれまでに使い切ったインク瓶はせいぜい2つか3つといったところです。まだまだ経験が浅いため、ここから先の話はインクをアナログ画材として使っている絵描きさんの話も調べながらまとめています。

間違いや認識の違いがありましたらご指摘いただけると助かります。

第3回 「インク」について

インクには鮮度がある

インクの経年劣化は思っているより早いです。たとえ密閉してもインク成分である溶剤が徐々に分離し始めます。

いちどフタを開けて空気に触れたインクは、書き味を落とさないためにも、なるべく早めに使い切るようにします。

インクを小出しに使う方法

インクの劣化を遅らせる方法として、10ml程度の小さな容器にインクを小分けにする使い方があります。

この方法でしたら、インク本体のフタを開けっ放しにしなくて済むため「水分の蒸発」や「ホコリの沈殿」を防げます。

インク瓶から小分け容器に移し替える際に便利なスポイト

私が小分け容器として使っているのは、ハンドクリームのサンプル容器です。「シリンジ」や「スポイト」を使ってインクを移し替えています1

皆さんいろいろ試行錯誤しているようで、他にも

  • ピルケース
  • 彩料ビン
  • 油壺(油彩用)
  • るつぼ
  • コンタクトレンズのケース
  • タミヤのスペアボトル(丸ビン)

といった容器を小分け用として使っていました。

特に模型用塗料を保管するタミヤの空き瓶は密閉性にすぐれています。

2017年追記)ツイッターの声をきっかけに商品化された「Conic Bin」という特注のインク瓶が発売されています。ガラス製の小口により、フチ部分にインクがこびりつかず、最後まで気持ちよく使える点で使い勝手が良さそうです。転倒する心配がないどっしりした土台も魅力。

底が浅い容器だとインクを付けるのが楽になる

底の浅い小分け容器を使うことで、インクの付け足しが楽になる様子

化粧品のサンプル容器だとインクの水位が高すぎず、容器の底にペン先をトンと当てるだけで丁度いい具合にインクが浸かります。瓶の開け口でインクを拭う必要がなく、ペン軸が汚れることもありません。

インクをこぼしてしまう心配

容器が小さいので気をつけないと、いつかこぼします。

小皿や灰皿の上に容器を置くなどして、さらに練り消しで土台を固めると不意な転倒を防止できます。

線の伸びが悪いと感じたら

つけペンの使用中は容器のフタが開いたままなので、徐々に水分が蒸発し、インクが濃くなります。その際には、わずかに水を足すとインクの粘度が下がり、書き味が元に戻ります。

私の場合、インクの下りが悪いと感じたらそのたびに水を数滴ほど差し、いよいよ線が薄いと感じた時点でそれまでのインクを捨てて新しく補充するようにしています2。インク濃度を調整する際は、「シリンジ」や「スポイト」、「つる首ポンプ」などを使うと便利です。

実際のところ、水で薄めていいのか分かりませんが、少量のインクなので雑菌が繁殖して腐る前に使い切れます。また、書き味の目立った変化は感じませんでした。

一手間さえ惜しまなければ、気持ちよく使える

インクに浸したペン先を瓶のフチで拭うと、いつしか固形状のカスとなってインク表面を漂うようになります。これがペン先に付着すると厄介です。

インク瓶は消耗品の割になかなか減らないので、最後まで気持ちよく使い切るためにもインクを小分けにして使う方法をオススメします。


ここまでインクの劣化を抑えつつ、つけペンを手軽に使う方法を紹介しました。

次はそれぞれのインクの特性についてまとめます。

ペン習字でよく使われるインクとその特徴

にじみの少ないペン習字向きのインク(顔料系)をいくつか紹介します。

開明墨汁

開明墨汁の容器

「適度な光沢」と「線の伸び」を両立した墨汁です。黒々とした線によって作品の見映えが良くなります。

私が初めて使ったインクは「開明墨汁」でした。たしかに使い始めはサラサラと書きやすかったのですが、しばらくすると墨汁ならではのトロミが出始め、線の伸びが悪いように感じました。ちょいちょい水を差しながら使い切った憶えがあります。

調べてみると、開明墨汁は動物性タンパク質であるニカワを含んでいるため他のインクより腐敗しやすいようです。また、ニカワが固まらないように塩化カルシウムを配合しているので、使用後はよく洗わないとペン先が錆びます。

当初、ペン先は徐々に錆びるものとばかり思い込んでいましたが、これは開明墨汁の成分によるものでした。使い終わる際は、アルコールを含ませたティッシュなどで拭っておくと、錆の発生を予防できます。

また、同じ開明製品として「墨の華」があります。こちらは樹脂系の墨汁です。錆びません。開明墨汁より乾きが早く、細い線も引けるとあって画材として一定の需要があります。

パイロット / 製図用インク

製図用インクの容器

パイロットの「製図用インク」は、開明墨汁より発色がやや劣るものの、線の伸びがよく、インクの乾きが早い特徴があります。

私は作業のしやすさを重視して製図用インクを主に使っています。書いた文字は数分以内には確実に乾くので、パイロットの製図用を使い出してからはインク汚れによる事故が極端に減りました。

ただ、インクの乾きが早い分、ペン先に付けたインクの状態も刻一刻と変化します。インクをこまめに付け直すか、拭き取るかしないと書き出しで線がカスレやすくなります。

製図用インクは発色が薄いという口コミについては、私は特に気になりませんでした。

セーラー万年筆 / 極黒

極黒の容器

「耐水性」「耐光性」に優れ、万年筆用としても使える顔料インクです。

水分が飛ぶと固まる顔料の特徴は抑えているものの、手入れを怠るとやはり目詰りします。使用後はインクをよく拭き取るようにします。

発色は、際立つ黒とまではいかず、ほどほどな黒色でした。

ニカワ成分は含んでおらず、開明墨汁より劣化は遅いと思います。

つけペンが上手な人は、インクの状態管理も出来ている

つけペンは、「ペン先」「ペン軸」「インク」が三位一体となって使いやすさを実現する、手間のかかる筆記具です。

特に使い始めは、線のかすれに悩まされることが多く、ペン先の扱いにようやく慣れてきた頃に、今度は時間差でインクが濃くなって線がかすれ、振り出しに戻ったかのような感覚に陥ります。

インクのコンディションにさえ気を配っておけば、上手く書けない原因は「ペン先の状態」もしくは「書き方」の2つに集約できます。


最終回は、書き方のコツや疑問について一問一答形式で解説していきます。

  1. スポイトを使ってインクを移し替える際は、含んだインクを出し切る直線の飛沫に注意してください。 []
  2. 小分けしたインク容器もフタの開け閉めを繰り返すうちに固形状のカスがこびりつくため、インク交換時には容器を丸洗いするようにしています。 []

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