正しいペンの持ち方について調べてみた

正しいペンの持ち方を習う機会は非情なほど少ないです。

小学校でそれらしい手ほどきを受けてからは、表立って持ち方を見直されることもなく、自ら進んで持ち方を直したいと思ったときには、一度身に付いた頑固なクセが固着しており、なかなか直せない。持ち方の矯正法がよく分からない。

仕事柄、人前で書くことが多い人にとってはたいへん悩ましい問題です。

そんな人のために、持ち方の見本だけでなく、それぞれの指の力加減も踏まえて解説していきます。

はじめにまとめ

これから説明する持ち方は、各所で調べた持ち方の良いところを抜粋してまとめたモノで、いわゆる“望ましい持ち方”の1つとして紹介しています。この持ち方が“絶対に正しい”というわけではありません。

また、手の大きさや指の長さには個人差があり、それぞれに合った持ち方は微妙に異なるはずです。

ここで紹介する持ち方は基本フォームに留めてもらい、ある程度なじんできたら、今度は自分にとって持ちやすい持ち方にチューニングしてください。

正しい持ち方のなにが良い? その効果とは

ここで紹介する持ち方のフォームを身に付けると次のような効果を実感できます。

  • 長時間・大量の筆記作業が快適に。
  • ペンだこ・腱鞘炎(けんしょうえん)の予防に。
  • 「ペンは力を入れなくても書ける」という意識の転換。

ペンの自重だけで線が引ける持ち方は、それだけで指の疲労感を軽減できます。

紙の裏にまでくっきり筆跡が残る強い筆圧とは、今日限りでおさらばしましょう。

真似してみよう 持ち方の見本

横から見た持ち方

下から見た持ち方

一人称(本人)の視点から見た持ち方の見本として分かりやすいのが、『10日で「美文字」が書ける本』です。

付録のDVDから正しい持ち方を360度チェックできます。

『DVDですぐ上達!10日で「美文字」が書ける本』
青山 浩之
講談社(2013/11/29)

Amazonでみる

著者は、「かきかた」の教科書作成にも携わっている青山浩之先生です。

この本では、正しいペンの持ち方は「握る」のではなく「つまむ」ように、と説明しています。

くるりん法でペンを持つ

  1. 机の端からペン先がはみ出るように置き、親指と人差し指でつまむ(つまむ位置は、ペンの先端から約3cm)。
  2. ペンを上に持ち上げ、中指で押し出しながらくるっと手前にひっくり返す。
  3. 中指をペンに添えて、3本の指で軽く持つ。

青山先生の「くるりん法」を使うと、わずか3つのステップで正しくペンが持てるようになります。

筆記具によって異なる持ち方の角度

デスクペンのよい持ち方 - 側面から

横から見たデスクペンの持ち方

『パイロットペン習字通信講座 学習ガイド』p8より

デスクペンや万年筆は少し寝かせて。(私の持ち方はこんな感じです)

ボールペンのよい持ち方 - 側面から

横から見たボールペンの持ち方

『パイロットペン習字通信講座 学習ガイド』p9より

ボールペンはやや立て気味に。(私の持ち方はこんな感じです)

いずれの持ち方も人差し指の第二関節までを“ペン軸に巻きつけるようにして”持っています。ペン軸と人差し指が接する面積を増やすことで安定感のある持ち方になります。

Q&A なぜ筆記具によって持ち方の角度が違うの?

それぞれの筆記具には、“推奨される持ち方の角度”が存在します。

鉛筆
55~60度
ボールペン
60度~90度
万年筆・デスクペン
書きたい字幅に応じて(55~60度が適当)

約60度。この角度が筆記する上で指に負担がかからない理想的な角度といえます。

60度の角度を基準として、ボールペンを使う際はわずかに立て気味にすると書きやすく感じます。

ボールペンの筆記角度

ボールペンは紙の上でボールが回転することで、ペンのインクが紙へ転写します。そのため、ボールが回転する60°~90°の筆記角度で筆記するのが理想的です。

引用元:お客様相談室 紙の上でボールが回らない場合 | 三菱鉛筆株式会社

ボールペンの場合は、あまり寝かせて書くとインクを引き出すボールが正しく回転せず、線がかすれます。快適な書き味を維持するためにも、やや立て気味で持つようにします。

それぞれの指の力加減

「ペンが落ちない程度に支える」これを基本として、親指と中指でペンを持ち、人差し指がナビゲーター。小指は土台役。

親指と中指の配置

上のような持ち方に人差し指を添えてやる、だと分かりやすいかな?

上から下の線は人差し指と手首のスナップをきかせるように、右から左の線は親指と手首を意識して書くと線が決まります。

小指についてもっと詳しく

ペン字関連の教本ではめずらしい「体の上手な動かし方」について言及している書籍をベースに小指の使い方を説明します。

『まっすぐな線が引ければ字はうまくなる』
高宮 暉峰 (著)
日本実業出版社 (2006/5/18)

Amazonでみる

小指が働けば字は劇的に上手くなる

おそらく多くの方は、

  1. 人差し指
  2. 親指
  3. 中指

の順番で、力を入れていると思います。

直接ペンを握るその三本の指に力が入るのは当然のことですが、ずっとそのままの状態が続くと、手はかなり疲れてくるはずです。(p70)

引用元:『まっすぐな線が引ければ字はうまくなる』 高宮 暉峰 日本実業出版社(2006年)

私も以前は、人差し指の腹に思いっきり力を入れて書いていました。

指先が真っ白になるくらい握りこんで、血液が通っていないのが丸分かりです。

では、疲れずにボールペンを安定させるには、どうやって持ったらよいのでしょうか?

それは、ずばり「小指」に力をいれるのです。

ボールペンを持っているとき、小指は軽く握られた状態になっています。

この状態のまま、小指を手のひらにくっつけるようにして、軽く力を入れます。

ぎゅっと握り締める必要はありません。軽く「くっ」と力を入れてみてください。

小指に軽く力を入れると、手のひらの中心と下の部分に自然な力が入ります。これが大切なのです。

この部分を支えにしながら、ボールペンを握ると、ペンを持つ腕の下側に力が入ります。

そうするとその力が肘に連絡されるので、上手に肘を使うことが出来ます。(p70,p71)

引用元:『まっすぐな線が引ければ字はうまくなる』 高宮 暉峰 日本実業出版社(2006年)

小指が土台となることで腕全体の筋肉が使われ、その力が肘にも連絡されるわけですね。

しっくりとくる小指の曲げ具合には個人差がありますから各自で調整してみてください。

用紙に触れる手の位置は?

意外と重要なのが、紙と手が触れる場所です。

用紙に触れる位置

2箇所の赤丸部分が土台となる場所です。

小さな赤丸は、小指の第一関節を指しています。

大きな赤丸は、手の平の側面(小指側)を差し、この場所を「小指玉」と呼びます。

小指から小指玉にかけて、手の側面全体をべったり置いても問題ありませんが、夏の時期など手が汗ばんでいると紙がべとつき、書きづらく感じます。

普段から「小指の第一関節」と「小指玉」のみ接紙して書けるようになっておくと、環境を問わず軽やかに筆記できます。

薬指はどうすれば

親指・人差し指・中指の位置さえしっかり決まれば、薬指も自然と具合の良いポジションが見つかります。

筆記中は、中指に引っ付くようにして薬指が動きます。

このとき小指は土台となっている状態です。そして、ペン先が止まっているときは、小指の上に薬指がちょこんと乗ります(無意識のうちに)。

深く意識すると混乱する箇所でもあるので、感覚的にしっくりくるポジションを探してみてください。

ここまでのおさらい

正しい持ち方のフォーム
「くるりん法」でつまむように持つ。
筆記しやすい持ち方の角度
約60度を基本として、ボールペンはやや立て気味に。
それぞれの指の力加減
親指と中指でペンを持ち、人差し指がナビゲーター。小指は土台役。
用紙と紙が触れる位置
「小指の第一関節」と「小指玉」。

横から見た持ち方

『さらばクセ字! 初めての美文字レッスン』 p7より

ここまで読んだ方なら、上の画像のチェックポイントをすべて理解できるはずです。

「小指玉」を固定する書き方は、大きな文字になるほど窮屈に感じる書き方となってしまうため、場合によっては肘をも動かす気持ちで書くと、楽に書けます。

サラサラと軽やかな手つきで書くためには

丁寧に書こうと思うほど指先に力を込めてしまう書き癖は、私もかつてそうでしたのでよく分かります。

ペン軸を強く握るほどペン先はブレず安定した線が書けるため、自然と強張った持ち方となってしまうのは当然の成り行きです。

しかしその強く握った持ち方、果たしてそこまでの力が必要でしょうか。

試してみてください。親指と中指の2本だけでペンを持ち、ペンの重みだけで書くと、おぼつかない線ながらもインクはたっぷりと出てきます。

実際問題、ペンの自重だけで線は書けるのですね。ここに人差し指の3本目が加わると線が先ほどより安定するのではないでしょうか。

ここからが重要な点です。

ペンを支えるのに必要最低限な力を指に加えたとき、この状態からどれだけの力を足していけば安定した線を引き出せるのか。

サラサラと軽やかな手つきで書くには、「文字を書くのに過度な力は必要ない」という意識の転換が必要になります。この記事がゴールと定めているのはまさにここです。

持ち方さえ良くなれば疲れにくい持ち方ができるわけではないのです。

持ち方の改善は、ふんわりとペンを持つための土台作りに過ぎません。

しかし、頭では分かっていても、実践してみるとつい筆圧が上がってしまい思うように書けないんですよね。

「じゃあどうすればいいのか」というと、やはり常に意識するしかないです。力は入れなくても書けるものなんだ、と。

すると、ふとした拍子にふわふわと書けるようになるときが訪れます。恐らく何の前ぶれもなく。

「求めていた感覚はこれかもしれない」軽やかに書くための前提が必要だとしたらこの経験だと思います。

それでも筆圧が強い人はどうすれば?

「持ち方」と「筆圧」の両方に意識を集中させるのが難しいと感じる人は、持ち方矯正器具を利用してみる方法があります。

文房具店でよく見かけるのは、

もちかたくん
装着に少し手間はかかるが、矯正力が強い。
プニュグリップ
普段の筆記作業に使っても違和感が少なく、握り心地が良い。

どちらも鉛筆専用の道具ですが、プニュグリップに関しては、ボールペンのグリップとして代用できます。

関連記事)正しいペンの持ち方が学べる学童文具

あとは実践あるのみ

良くない持ち方だと自覚している人にとっては、普段使っていない筋肉を酷使するために指がつります。

私の場合、小指に繋がっている筋肉が特に痛かったです。

最初はへろへろな文字になって違和感がありますが、これはしょうがないです。忍耐強く続けてみましょう。

自転車や逆上がりの練習と同じ要領だと思えばいつかきっとできるはず。

出典

スポンサーリンク

シェアボタンから、この記事の情報をおすそ分けできます。

ペン字いんすとーるの更新情報を購読できます。

コメント

  1. みこ より:

    はじめまして 質問なんですが自分は字を書いていると親指が人差し指のところによっていってしまうのですがどうすればいいでしょうか。 アドバイスお願いします。

  2. uta より:

    >>みこさん
    返信できずじまいになってごめんなさい。

    もう少し詳しい情報がないと何とも言えませんが、
    持ち方を矯正する途中で無意識のうちに自分のクセが出てしまい、
    ペンを徐々に立て気味に持ってしまう筆記角度が悪さをしているのだと思います。

    根気強く取り組むことが必要になってきます。

  3. sa より:

    はじめまして、お尋ねしたいことがあります。

    小指は手のひらに当たるように完全に曲げるのでしょうか?
    そういたしますと私の場合、小指を手のひらの方に持っていくと薬指も引っ張られ、そうすると大変中指が不安定になります。
    普段の持ち方は小指も薬指も軽く卵が入るように丸めて全て中指に引っ付けています。

    丁度この返事の内容にのっている画像と同じ持ち方です。

    <<uta 09-04-07 (火) 20:48
    >>ぶんたさん

    参考になるか自信がありませんが、中指と薬指の位置関係が分かる画像だとこんな感じでしょうか。
    http://cumacuma.jp/images/penji/diary/070701r.jpg
    ドクターグリップ Gスペックを紙面に対して約70度の角度で持った状態です。小指・薬指・中指が緩やかな階段状に重なっています。
    私が持ちやすいボールペンの持ち方に過ぎませんので、1つの例として参照していただければと思います。
    それから、記事内の終盤に薬指の項目を追加しました。よろしければご覧ください。

    全て目を通したのですがどうしても分からず、これであっているのか不安だったので書き込ませていただきました。

  4. uta より:

    >>saさん

    ご質問の件ですが、saさんが実践されている持ち方で合っています。

    ペンを立て気味に持つほど、小指は手の平の方へ引っ張られますが、
    それでも密着するような持ち方にはならないはずです。

    ぎゅっと握るような関節がこわばるペンの持ち方はそれだけ疲れやすいです。
    ペンを持つ手はあくまでゆったり、やさしく、ふんわりと。
    「手の平の中に卵がおさまるような」という表現は、自然体を心がけてくださいといった意図があります。

    読ませていただいた文面からは、特に問題はないように感じました。
    どうぞ快適な筆記生活を。

  5. sa より:

    数年前の記事ですので、まさかこんなに早く質問に気付いていただき回答がつくなんて驚きました・・・!

    持ち方も始めた当初はなかなか慣れずに小指が疲れていたりしていたのですが、今ではだいぶ慣れる事が出来ました。
    慣れてきて余裕が出てきたからか、それゆえにずっとこれで合っているのだろうか、質問してみようかと迷っていたことをふと思い出し、今回書き込んでみました。 回答を頂く事ができ、今とても嬉しいです。
    ありがとうございました。

  6. na より:

    小指をく字に曲げて、手のひらにで、紙にさわる部分が少し写真と変わるのですが
    神につけたところは、固定して書くでいいのでしょうか

  7. uta より:

    >>naさん

    文字でのやり取りになりますので、限られた情報では
    どうしても推測の域でしか申し上げられません。

    ご自身の悩みが相手に伝わるか見直した上で
    コメントしていただけると助かります。

  8. miko より:

     ご丁寧な解説をありがとうございました。こういうページを以前から探しておりました
    ので嬉しいです。私の字は漢字やひらがな等が 文章の中で大きさや形が揃っていないのが特徴で なかなかそれが直りません。 持ち方に気をつけて練習します。
    ありがとうございました。  

  9. uta より:

    >>mikoさん
    お役に立てたようでよかったです。

    文中で字粒を揃えるのは、私も苦手です。
    目の前の一文字に集中してしまって、大小のバランスまで気配りできないことがよくあります。

    姿勢を正して文章を俯瞰する形で、木だけでなく森も見られるようになれたらいいのですが、なかなか難しいものです。

  10. maromaro より:

    お世話になります。
    パイロットの教本ではペン先割線の延長線上に人差し指の力点がきます。一方、万年筆「カクノ」での持ち位置は人差し指がサイドにスライドします。
    どう考えればいいんでしょう?
    御指導を御願い致します。

  11. uta より:

    >>maromaroさん

    おそらくこの場合、
    どちらの持ち方が”線を引きやすいか”という視点で捉えた方が
    疑問を解決しやすくなると思います。

    「カクノ」を持った場合、その構造上、ペン軸の平らな場所に中指が位置し、
    その結果として、maromaroさんの仰る「人差し指がサイドにスライドする」状態になります。

    このときのペン先は、笑顔マークが見えるはずで、
    パイロットの教本が示す持ち方と比べて
    手前側にひねった状態でペンを持つことになります。
    (ここまでは大丈夫ですかね)

    で、「カクノ」の笑顔マークが見える持ち方というのは、
    インクフローが最も良くなるペン先の角度です。

    対して、パイロットの教本が示すペン先の角度は、
    線が細くなりやすい特徴があります。

    万年筆系の持ち方になると、
    ペン先の角度も考えないといけないので
    ややこしい説明になってしまいましたが、
    maromaroさんにとって「線が書きやすく、指先に負担がかからない持ち方」を
    追求すると、答えが見えてくるかと思います。

  12. maromaro より:

    ありがとうございます。
    実は…
    カクノが書きやすいんです。

    アドバイスを頂いたおかげでステップアップ出来そうです。

    しっかり練習し自分のものにするぞ❗️

  13. 坂本 より:

    質問させて頂きます。
    私がこの記事のような持ち方を実践すると、各指が障害となり右下へのはらいが歪なものになってしまいます。
    ペンを立てて書くことでこの事を補っているのでしょうか。
    どうぞよろしくお願い致します。

  14. uta より:

    >>坂本さん

    持ち方を矯正した結果、「木」の最終画のような右払いが上手く決まらない、というお悩みでよろしいでしょうか。

    おそらく、指先だけで書こうとしているのが原因ではないかと思います。
    特に、”小指と紙面が接する位置を固定した状態”で右払いを行うと、
    大きな文字になるほど指先の動きが制限され、窮屈に感じる書き方となってしまいます。

    坂本さんの仰るペンを立てて書く方法は、
    ペン先の可動域が広がる有効な手立てのひとつです。

    さらに付け加えるなら、
    小指を置く位置を適宜スライドさせる書き方が根本的な解決策になります。

    小指を紙に押し付け、そこから一瞬たりとも離れない書き方とするよりも、
    小指を置く位置は、ペン先の動きと呼応し、流れるように右下へ滑らせる。
    このようなイメージで右払いを行うと書きやすいのではないかと思います。

    それでもしっくりこないときは、肘をも動かす気持ちで書いてみてください。