あまり話題にされないデスクペンの隠れた魅力

デスクペンとカートリッジインク

マイナーすぎるせいか、ネット上ではあまり話題に登らず、未だ日の目を見ない文房具があります。

万年筆と似ているようで少し違うデスクペンという筆記具を紹介します。

デスクペンとは?

デスクペンは、「卓上での利用に特化した筆記具」です。

その大きさゆえにペンケースに収まりきらず、携帯するには不向きなペンでもあります。

高級感あふれる万年筆と比べると、外観・ニブ刻印ともにシンプルで、尾軸の形状がシュッとすぼまっているのが特徴です。

最近では、入門用万年筆「カクノ(F)」や「プレピー(0.2)」の登場によってデスクペンの影がさらに薄くなってしまいましたが、日本語が美しく書ける一点においては抜きん出ており、事務仕事やペン習字のお供として多くの人に愛用されています。

万年筆とはどこが違う?

細字タイプの製品が多い

デスクペンは、細字タイプのラインナップに特化しています。

ペン先は極細(EF), 細字(F)といった製品が多く、細い字幅によって切れ味のよいスッキリとした線を書きやすいです。

デスクペンで書いた文字

字幅が細いと、小さな文字を書いても黒つぶれしにくく、日本語を書くのに適した筆記具でもあります。

ペン先の素材は「ステンレス」

デスクペンは安価で手に入ることもあって、ペン先の素材は「金メッキ仕上げのステンレス[1]となっています(鉄ペンとも言います)。

デスクペンのペン先

ステンレス鋼という素材の特性上、金ペン[2]と比べてペン先の弾力性は乏しいです。

  • 「金ペンは紙当たりが優しく、しなやかに書ける」
  • 「鉄ペンはカリカリ感があって、書き味が硬い」

一般的によく言われる書き味でいうと、デスクペンは後者に該当します。

ハード調のペン先は筆記時に紙面からの反発を受けやすく、手が疲れやすい特性がありますが、「線は力を入れなくても書けるもの」という意識が持てるようになると、この辺のデメリットは帳消しにできます。

関連記事)正しいペンの持ち方について調べてみた

私が思うデスクペンの長所 3つ

その1. シャープで安定した線を書きやすい

インクが出る仕組み

ボールペンとデスクペンではインクが出る仕組みが異なり、その構造も大きく変わります。

ボールの回転によってインクが転写されるボールペンは、いわば「玉乗りをしている状態で線を書くようなもの」で、特に油性ボールペンはペン先が自走しやすく、硬い机の上で書くと思わぬ方向に線がブレやすいです。

一方、デスクペンは、書き手の筆圧が紙面へ直に伝わるため、線質に安定感が出ます。

金ペンほどではないものの、ペン先のたわみがサスペンションの役割を果たし、筆圧を一定に保ちつつ、手先の疲れを軽減します。

また、書き味の良さを重視した万年筆は、インクフローが良いせいか、線のアウトラインが微妙にぼやけます。

これを「味わい」として楽しむ用途なら問題ないのですが、ペン習字のようなメリハリある文字を書きたいときはデスクペンが適しています。

その2. 細身の軸が良い

デスクペンの軸

ペン先に向かって徐々に細くなる胴軸は、手に馴染みやすく、これは万年筆の持ちやすさを一部継承しているようにも感じます。

加えてデスクペンは胴軸経が小さいため、細軸派の人にとっては、さらに持ちやすく感じるはずです。

その3. コスパに優れている

「極細万年筆の書き味が安価で手に入る」デスクペンの存在意義はここにあるのかなと個人的には思います。

たとえば、プラチナ万年筆の「#3776 センチュリー」が欲しいと思っている人は、同メーカーから発売されている1,000円程度のデスクペンで似たような書き味が手に入ると考えたら、かなりお得です。

中にはその書き味に魅了され、「万年筆欲しい病」を和らげる作用もあるとか。

デスクペン、万能な筆記具ではないけれど

10年前の文房具事情だったら、「すっきりとした線質で、長時間書いても疲れにくく、安価で手に入る筆記具といえばコレ」のポジションがデスクペンでした。

ところが、とどまることを知らない文房具の技術革新によって今では「ユニボール シグノ(0.28mm)」といった超極細のゲルインクボールペンが登場しています。

目詰まりの心配から、染料インクを使わざるを得ないデスクペンと比べると、ゲルインクは顔料系も備えていて、線が滲みにくく耐水性もあります。

「売れる商品に資金を投入して開発力を高めるサイクル」がボールペン市場には出来上がっているんですよね。

その点でいうと、デスクペンは蚊帳の外で一部の商品が廃盤になったりと、時代の波に取り残されている感は否めません。

いちばんのメリットは

私の中でのデスクペンは「つけペンほどではないものの、万年筆系統の中では”冴えた張りのあるきれいな線”を書きやすく、管理の手間もそれほど要らない手頃な筆記具」といった位置づけです。

デスクペンがスタンドに収まる様子

特にデスクペン用のスタンドと対を成したときに本領を発揮する気がします。

限りある机の領域内で専用スタンドという特別座席を与えるVIP待遇によってデスクペンの格は上がり、ひと味違った筆記感を味わえます。

プラチナ万年筆 デスクペンスタンド

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手に持った瞬間から書き出せる手軽さが、私としては何にも代えがたく、キャップを脱着する一手間を省ける筆記環境にあやかれるのが、あえてデスクペンを使い続ける理由かもしれません。

デスクペンを使うとペン習字やってます感が心なしか高まります。

もともと筆圧の高い人は、まずはデスクペンを足がかりにするとファースト万年筆のペン先寿命が伸びますし、いっそ極細万年筆の代わりとして使い続けるのも良いですし、補充しやすい価格帯だけにかなり都合の良い筆記具です。

はじめの一本を選ぶとしたら

手持ちのデスクペン

デスクペンを扱っている国産メーカーと主な品名は次のようになっています。

プラチナ
  • KDP-3000A (3,000円)
  • DP-1000AN (1,000円)
  • DPQ-700A (700円)
パイロット
  • DP-500 (5,000円) ※廃盤(流通在庫のみ)
  • DPN-200 (2,000円)
  • DPP-100 (1,000円)
  • DPN-70 (700円)
セーラー
  • デスクペン (1,000円)

プラチナとパイロットで共通しているのは、いちばん安い価格帯のデスクペンからワンランク上のペンに移行すると、書き味の変化が如実に分かるほど滑らかになり、カリカリ成分が大幅に軽減します。

一方、ミドルクラス(1,000~2,000円)からトップクラス(3,000~5,000円)のデスクペンに買い替えると、万年筆の性質により近づいてインクフローが良くなるため「じゃあ、デスクペンじゃなくてもいいよね」といった感想になりがちです。

よって、各メーカーのミドルクラス(1,000~2,000円程度)が書き味と価格のバランスがとれたデスクペンになる、というのが数年使用した私なりの実感です。

次に挙げる2本のデスクペンがそれに当たります。

プラチナ DP-1000AN (定価1,080円)

プラチナ DP-1000AN

  • 書き味はやや硬め。
  • 硬筆らしい軽快で張りのある線を書きやすい。
  • どちらかといえば、楷書向きの特徴がある。

プラチナ万年筆 デスクペン 極細(EF) DP-1000AN

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パイロット DPN-200 (定価2,160円)

パイロット DPN-200

  • デスクペンの中では紙当たりが優しめ。
  • 伸びやかで筆力ある重厚な線を書きやすい。
  • どちらかといえば、行書向きの特徴がある。

パイロット デスクペン 極細(EF) DPN200

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当たりのデスクペンの見分け方

検品を通った国産製品に当たりも何もありませんが、ペン習字の観点からいうとインクフローが良すぎるデスクペンは使いにくい印象があります。

というのも、書き出し時から表面張力が分かるくらいインクが盛り上がってしまうと、線質の強弱を表現しにくいからです(つけペンで例えるなら使い倒して寿命を迎えた状態)。

線の緩急をつけやすいデスクペンの見分け方としては、普段の筆記速度は保ったまま、「筆圧ゼロによるインクフローは絞り目で、わずかに筆圧をかけるとじわっと線が太くなる」そんな個体に出会えたらペン習字用途では当たりといえます。

とはいえ、デスクペンを試筆できるお店は滅多にないので、この辺は運次第なところでもあります。


ここから先は、インクとお手入れの方法について説明していきます。

2種類あるインクの補充方法

デスクペンは、万年筆と同じインクを使用できます。

カートリッジ式

カートリッジ式は、プラスチック容器に予めインクが貯蔵されており、首軸に差し込むだけで使えるタイプです。

カートリッジインク

基本的には各メーカーの純正カートリッジを使うことになります。それぞれが独自規格のため、他メーカーとの互換性はありません。

カートリッジインクの違い

パイロットのカートリッジ(左)とプラチナのカートリッジ(右)は、それぞれ「薄いフタ」と「金属球」がインク栓となっています。

カートリッジインクの装着の仕方

装着方法は、カートリッジをまっすぐ差し込むだけです。

デスクペンの首軸に内蔵されている「槍(ヤリ)」と呼ばれる部品でカートリッジの差し込み口を破るとインクがペン先まで下りる仕組みになっています。

パイロット 万年筆用カートリッジインキ【黒】

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コンバーター式

コンバーター式は、インク瓶から直接インクを補充するタイプです。

コンバーターの種類は3つあります。

  • プッシュ式
  • 回転式(上の動画と同じタイプ)
  • 板バネ式

こちらも各メーカーの純正コンバーターを使います。

パイロットのデスクペンは、「CON-40」 プラチナのデスクペンは、「コンバーター500」いずれも回転式のコンバーターが適合します。

コンバーターを使うと、「黒」「青」「赤」以外にも、ご当地の四季や街並みをイメージしたオリジナルインクや日本の美しい情景をモチーフとした色彩雫など、選べるインクのバリエーションが広がります。

参考リンク)色彩雫(いろしずく)見本帖 - PILOT

お手入れの方法

最上のメンテナンスは、ペン先のインクが乾かないように毎日使うことです。

カートリッジインク

しばらく使わなかったり、別のインクを使うときは、コップの水に一晩ほど浸けておくと余分なインクが浮き出てきます。

うっかり放置してペン先にインクが固着してしまったときでも、染料系のインクでしたら、ぬるま湯に一昼夜浸しておけば復活します。

もし「極黒」といった「万年筆用顔料インク」で目詰まりを起こしてしまった場合は、専用の洗浄液を使うと使用不能状態をリセットできます。

プラチナ 万年筆インククリーナーキット

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参考リンク)基本的なお手入れの仕方 - PILOT

「手間いらずのカートリッジ式インク」「ペン先は流水で洗浄できること」これさえ覚えておけば、デスクペンを手軽に末永く使用できます。

おわりに

デスクペンは、極細万年筆の代わりになり得ること。

このことを知ってもらいたくて今回の記事を書きました。

「メモ帳など狭い紙面に小さな文字を綺麗に筆記したい」という目的を達成したい場合は、国産の細字の鉄ペンが一番使いやすいと思っています。

金ペンを凌駕する国産の鉄ペン - 細字万年筆にこだわる
  • 書き心地を求めるなら太字の高級万年筆
  • 線質を求めるなら極細万年筆もしくはデスクペン

棲み分けを明確にしておくと、無秩序にペンが増えていくことがなくなり、お気に入りの1本と出会える確立が高まります。

  1. プラチナのデスクペン「KDP-3000A」とパイロットのデスクペン「DP-500」のペン先は14金となっています。 []
  2. 14金の場合、金の含有率は58.5%となっています。
    金の割合が上がると、18金(純金75%)、24金(純金99%)となり、価格帯もそれに比例します。
    金の純度が高いから「よくしなる」わけではなく、形状や加工方法によってペン先の弾力性が変わります。 []
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コメント

  1. 祥南 より:

    DPP-100 は、狩田巻山先生の ご意見を基にして、
    ペン習字用につくられたディスクペンと記憶して
    おります。
    万年筆は携帯用としての多様な局面での筆記や、
    小説家の早書き、万年筆の蒐集家としても高名で
    あった梅田晴男先生の嗜好も加味されて、舶来
    万年筆のインクフローに近しいように思われます。

    ディスクペンは名前が示すように、常に机上にあり
    紛失の恐れがありませんから、一生物の道具として
    愛着に応えてくれます。
    ちなみに小生は、筆圧がかなり強い方ですが、
    14金のディスクペンを約40年使用し続けて
    おります。
    ペンポイントが私の書き癖に馴染んで、他のペン
    には代え難い書き味が楽しめます。

  2. uta より:

    >>祥南さん
    DPP-100は、別名「デスクペン ペンジ」とも表記されていますね。
    狩田先生の働きかけがあったとは知りませんでした。

    デスクペンって40年も使えるんですか!驚きです。
    もはや手足の一部と化しているような…。すごいです。

  3. くわっつめん より:

    DPP-100は、狩田先生の声により生まれたものであるとは、初耳でした。
    デスクペンは細長い形状から、どことなく取っつきにくい印象がありますが
    使い慣れるとなかなかどうして、愛着が湧いてきますね。

    自分が愛用するのは、セーラーのものです。
    書き味はセーラーよろしく、固めであり馴染ませるにはかなり使い込まないとならないのですが、それだけ高いコストパフォーマンスを発揮してくれますね。
    飾り気のないボディだから、公共の場においても気兼ねなく用いることが
    できますし、下手に高いのを買うより良いやもしれません。
    確かに、デスクペンにもっと光が当たっても良い話ですね。

    また、デスクペンはカートリッジだけでなく、コンバーターも使えますから
    その点の柔軟性を買ってみる価値もありますね。

  4. uta より:

    >>くわっつめん
    不得手なところが見え隠れしたり、尖った性能があると愛着が湧きやすいっていうのはありますね。

    極細ボールペンの普及によってデスクペンの居場所が無くなりつつある現状ではありますが、
    ・万年筆の書き味を安価で疑似体験できること
    ・事務用品として一定の需要がある
    その価値が分かる人にとっては無くてはならないものだと思います。

  5. みゆう より:

    デスクペン、私もかなり長年愛用しています。筆圧の低い私にはわずかな筆圧でかけ、上手に見えるこのぺんはてばなせません。
    でも、一般の文房具やさんにはほとんど売っていなくて廃番になってしまったのかと思ってさがしたらありました。
    でも、一つだけ文句があるとしたらデザインかな。
    デザインがもう少しよかったら少しくらい高くてもいいんだけどと思うのと、高い万年室で書き味を少し試したんですが、かいておられるように、あまりぬらぬらというのはすきではないので、やはりこのデスクペンが一番いいです!

  6. uta より:

    >>みゆうさん
    文具コーナーで見かけるデスクペンは、目立たない場所でひっそりとたたずんでいることが多いですね。

    デザインに関しては、吊り下げ式の簡易パッケージからして万年筆のパチモンに見えなくもないですし、分かる人だけが求めて使っている印象があります。

    昨今の細字ブームにあやかりつつ、「元祖細字ペン」としてこれからも残り続けて欲しいと願うばかりです。

  7. チミチャンガ より:

    プラチナからはDP-800Sという顔料系のカーボンインクを使用したデスクペンも出ているようですね
    私もこの記事を見てDPN-200を購入し伝票の記入などに利用しています
    とても便利だし億劫だった細かい字を書くのが楽しくて気分がいいです
    教えていただきありがとうございます

  8. uta より:

    >>チミチャンガさん
    カーボンペンもありましたね。
    プラチナのカーボンインクは、紙質によってはひどく滲む場合もあって、
    使いどころを選ぶものの、紙との相性が良いと抜群に冴えた線が書けるので、
    これも一癖ある部類の文房具です。

    筆記具を変えるだけで、書くのが楽しくなって、気分も晴れやかになるって、 すてきな体験だと思います。
    末永く愛用していただけると、私もなんだか嬉しいです。