ペン習字の成果を実生活で発揮するための練習法を紹介します。
通信講座を修了した人の中には、
- 「手本がないと普段の字に戻ってしまう」
- 「結局は手本の真似が上手くなっただけだった」
そんな悩みや不満を抱えた裏の声があります。
せっかくペン習字の基礎が身についたのに、あと1つの階段を登れない状態はもったいなくもあり、受講生向けのフォローアップとして、手本がなくても手本のように書ける練習法をここにまとめておきます。
これからボールペン字講座を始める人は、テキストをさらに有効活用する方法として参考にしていただければと思います。
「はじめに」編では、「4つのステップできちんと書けるペン字練習法」の概要について説明します。
ペン習字は勘所を押さえるまでが難しい
ペン習字のような、体で覚えながら上達を図る習いごとは、言葉で分かりやすく説明するのが難しく、「とりあえずやってみなさい」といった教えが先行しがちです。
その一例が市販の教本でもよく見る「書き込み式の練習帳」です。
書き込み式練習帳では、まず「なぞり書き」から入り、自分にはなかった手の動きを追体験した後に空白のマス目に手本と同じように書く構成になっています。
この練習順序は、手本の書きぶりを自分のものにする意味ではたいへん理に叶った方法です。しかし、「なぜこの作業がいま必要なのか」について詳しく説明した教本はほとんどありません。
「字が上手くなるコツ。それは一画ずつ丁寧に、手本をよく見て書くこと」といったアドバイスにとどまっているため、手本を繰り返し真似する練習そのものに疑念が生まれてきます。
その結果、退屈な練習を反復する意味を見出せず、上達への確信が得られないまま道半ばで挫折してしまう。この習いごとのよくある失敗事例でもあります。
自分にとって意味があるとは思えない作業を強制されるのは、得てして耐え難いものです。上達の道筋を見通すためにも、「今やっていること」にはきちんとした理由付けが必要になってきます。
型稽古の意義を理解しないと続けるのは困難
日本に古くから伝わる武芸や伝統芸能には「守・破・離」という物事を学ぶ上での心構えがあります。
- 「守」
- 好むと好まざるとにかかわらず、理屈抜きで師匠の型を忠実に模倣すること。
- 「破」
- 他流の技術を取り入れながら、身につけた型を深く理解すること。
- 「離」
- 今までの鍛錬の集大成として独自の型を築くこと。
ペン習字にも「守・破・離」の精神が深く根付いています。
「手本と同じように書けるまで何度も繰り返し練習すること」は、「守」の教えにあたります。
基本を身につける「守」の段階は、はっきりいって地味で単調でつまらない作業の連続です。その上、効果があらわれるまでに時間がかかるときたら飽きます。イヤになります。
しかし、模倣がまともにできないうちから手癖で書こうとすると大抵は自己満足で終わり、相手に伝わる読みやすさとはかけ離れた場所に着地します。
思った通りに字を書くための土台は、徹底した型稽古の反復でしか築けないのであって、「守」の大切さが分かるようになるまでが最初にして最大の関門ともいえそうです。
4段階のサイクルを回すほど、字は上手くなる
ペン習字は学習のコツさえつかめば、独学に近い環境下でも上達できる特徴があります。
ただ、始めのうちは「分からないところが分からない」ものです。手本と同じように書いたつもりなのに、何かおかしいのは分かる。けれど、どこをどのように直したらいいのか分からない。
この始めの一歩を攻略するにあたって「4つのステップできちんと書けるペン習字練習法」が役立ちます。
これから紹介する練習法は、
- 手本を観察する際のポイント。
- 手本との誤差をどのように見つけ出し自己添削するか。
といった、ペン習字を習う上で欠かせない着眼点を
- (手本を)見て、
- (手本を見ながら)真似て、
- (その書きぶりを手本と)見比べて、
- (手本なしで)もう一度書く。
これら4つのステップに分けて説明していきます。
「先生から手取り足取り教えてもらいながら助走をつける段階を自力で解決する」という考え方に基づいた練習法でもあるため、4段階のサイクルを繰り返すほど上達を自覚できる正の連鎖が生まれやすくなります。
書いて、見る。見て、比べる。比べて、考える。考えて、知る。知って、書く。
このループを螺旋状に積み重ねることのみが、ペン習字の上達の道のようだ。
- よい手がほしい-20年遅れのペン習字-
ペン習字における基礎の基礎があるとしたら、私は「自ら気付く力」だと思います。
物言わぬ手本から技術を盗むのは非常に困難ですが、どんなに良い先生についたとしても主体的に学ぶ姿勢がない限り、その成長には限界があります。
この練習法は、多くの人が面倒だと感じる作業からあえて目をそらさず、、コツコツと取り組めば必ず上達できる手法としてまとめました。
同時に、ペン習字で成果を残されている方々は大なり小なり似通った切り口で練習しているように感じます。
その方法を私なりの見解で説明していきます。
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- ステップ1 - 手本をよく見る